WagestreamがGoogle Geminiを活用し、従業員からの給与前払いサービスへの問い合わせ80%以上をAIが自動解決できるようになった。

現場スタッフから毎日届く「答えが決まっている質問」

英国発のフィンテック企業Wagestreamは、企業の従業員が給料日前に働いた分の賃金を引き出せる給与前払いサービスを提供しています。小売・介護・外食など、シフト勤務が多い現場で急速に普及しているサービスです。

このサービスに付きものだったのが、定型的な問い合わせの洪水でした。「今月あといくら引き出せる?」「次の給料日はいつ?」「なぜ残高がこの金額なの?」——答えはシステムを見れば即座にわかるのに、CS担当者が1件ずつ手動で対応していました。複雑な相談に時間を割きたくても、定型問い合わせが次々と積み上がる。担当者の疲弊は深刻でした。

Geminiで「定型問い合わせ」を切り分けて自動化

WagestreamはGoogle Geminiを活用した対話型AIエージェントを構築しました。従業員がアプリ上でチャット入力すると、Geminiが給与データ・残高・引き出し履歴を参照しながら即座に回答します。人間のCS担当者は介在しません。

導入前に行ったのが、問い合わせの徹底的な分類です。全問い合わせを「定型対応で完結するもの」と「人間の判断が必要なもの」に分けた上で、AIが担う範囲を設計しました。金融に近いサービスだからこそ、回答できる範囲を最初に明確に絞り込む慎重さが必要でした。

問い合わせ80%以上を自動解決、深夜も即座に対応

結果として、全問い合わせの80%以上をAIが自動対応できるようになりました。応答時間は大幅に短縮され、深夜や週末の問い合わせにも遅延なく答えられる体制が整いました。

CS担当者が抱える業務量は激減し、支払いトラブル・アカウントへの不正アクセス懸念・従業員からの踏み込んだ相談など、本来注力すべき複雑なケースに集中できるようになりました。チームの業務満足度も上がったといいます。

「全部任せる」ではなく「切り分ける」が成功の核心

このプロジェクトが機能した理由は、AI化の範囲を絞り込んだ設計にあります。給与前払いは金融寄りのサービスであり、誤った情報の提供は信頼を損ねます。だからこそ、Geminiが担う範囲を「答えが一意に決まる問い合わせ」に限定し、複雑な判断が必要な場面には人間を介在させる設計にしました。

CSチームが「仕事を奪われる」ではなく「定型業務から解放される」と受け取れる組織文化も後押ししました。Google GeminiとVertex AIを活用したDominaの物流自動化事例でも、業務範囲を明確に設定した上でのAI化が成果に直結しています。

自社に取り入れるなら、まず問い合わせを分類する

WagestreamのCS自動化が80%という数字を達成できたのは、「定型問い合わせが多い」というサービス特性があったからです。同じ発想でCS自動化を検討するなら、まず問い合わせログを分類することが現実的な第一歩になります。

業種は違いますが、Tiendas CuadraがCopilot StudioでCS問い合わせを月400件全自動解決した事例も「定型を切り分ける」という設計思想は共通しています。答えが決まっている問い合わせをAIに任せ、人間は本当に価値を出せる業務に集中する——この分業は業種・規模を問わず機能します。

ドリップドリップ(執筆)

定型業務に追われて本来の仕事ができない、という状況は給与前払いサービスに限った話じゃないですよね。

Wagestreamが面白いのは「全部AIに任せる」ではなく「まず分類する」という設計の丁寧さです。答えが決まっている問い合わせだけを絞り込んだから、80%という数字が出た。

自社でも問い合わせログを眺めてみると、意外と「これ毎回同じだな」というものが見えてくるはずです。そこから始めるのが一番早い。

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