MercadoLibre, Inc.がClaude Codeを活用し、23,000人のエンジニアにAIコーディング支援を全社展開しながら50万件超のPRを自動レビュー、開発速度と品質を同時に引き上げた。
中南米最大のエンジニアリング組織が直面した「レビューの壁」
MercadoLibreは中南米18カ国以上でEコマース・フィンテック・物流を展開する地域最大級のテクノロジー企業だ。決済サービスMercado Pagoだけでも年間取引量は膨大で、そのシステムを支えるエンジニアは23,000人以上に達する。
開発規模が大きくなるほど、コードレビューのボトルネックが深刻になる。プルリクエスト(PR)が積み上がり、シニアエンジニアの稼働時間の多くがレビュー作業に費やされる。新機能開発や技術的負債の解消に使える時間が削られ、リリーススピードが落ちる——大規模組織が共通して抱える問題だ。
Claude Codeを全エンジニアに展開——PRレビューから始めて領域を広げる
2025年から2026年にかけて、AnthropicのClaude Codeを全開発者が利用できる体制を整備した。最初に手をつけたのはPRレビューの自動化だ。判断基準が比較的明確で、影響範囲が限定されているこの業務から着手し、成果を確認しながら活用領域を広げていった。
エンジニアリング部門と並行して、顧客向けにもAIを展開した。Mercado Pagoでは顧客問い合わせ対応のAIアシスタントを構築し、カスタマーサービスの自動化にも乗り出した。さらにAI広告ツールの活用も進め、収益への直接貢献を目指した。
50万件の自動レビュー・問い合わせ87%自動解決・売上67%増
エンジニアリング部門では50万件超のPRをAIが自動レビュー。コードの品質チェックとフィードバックをAIが担うことで、シニアエンジニアが承認判断に集中できる体制が整った。
Mercado Pago AIアシスタントは顧客問い合わせの87%を人手不要で自動解決するレベルに達した。残り13%の複雑なケースに人間のオペレーターが集中できる構造で、対応品質も維持している。AI広告ツールの活用では売上が67%増(為替変動中立ベース)を記録している。
「一つの業務でROIを確認してから拡大する」という設計思想
成功の鍵は段階的な展開にある。最初から全業務にAIを導入しようとせず、「繰り返し発生・判断基準が明確・影響範囲が限定されている」PRレビューを入口に選んだ。現場エンジニアが強制されることなく自然に活用できる環境を整えたことで、組織的な抵抗も少なかった。
CS部門でも同じ思想が貫かれている。まず定型問い合わせの自動解決から始め、AIが解決できない案件だけを人間に渡す設計にした。TELUSがClaude×MCPで57,000人の全社AI化を実現した事例でも、特定業務での効果検証から横展開へと進む同様の手順が取られている。
中堅企業でも再現できる「PRレビューから始める」アプローチ
Claude Codeのような会話型コーディング支援ツールは、GitHub ActionsやCIパイプラインに組み込むことで、PRの一次レビューを自動化できる。チームのコーディング規約やセキュリティチェックをプロンプトに組み込めば、スタイルガイドへの準拠確認や潜在的バグの指摘も自動化の対象になる。
CS自動化についても、IKEAが「Billie」でCS担当8,500人をデザイン職に転換した事例のように、まず繰り返し発生する定型問い合わせから自動化を始め、人間が対応する案件の質を上げていく順序が有効だ。
23,000人規模の組織でも始まりは「一つの業務」だった。AI活用を広げる際の判断基準は、「繰り返し発生するか」「判断基準が明確か」「影響範囲が限定されているか」の三つで絞り込める。Q3までに自律コーディング比率90%という目標を掲げるMercadoLibreは、その基準を一歩一歩確認しながらスケールしてきた。
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コードレビュー、地味に時間が取られますよね。特に経験あるエンジニアほど、他の人のコードを丁寧に見ることに稼働が取られていく。
MercadoLibreの面白いところは、87%の自動解決という数字だけじゃなく、「PRレビューから始めた」という切り口。一番詰まりやすい場所から解決する発想がシンプルで強い。
まず一つの業務で試してみる——その一歩が全体を変えるきっかけになります。