Coca-Cola Europacific Partners(CCEP)がSAP Integrated Business Planning(IBP)を活用し、AI需要予測で精度を6%向上させながら欠品・過剰在庫を同時に削減した。
欠品とデッドストックが繰り返されていた構造的な原因
CCEPは欧州・アジア太平洋・オーストラリアを含む29カ国で約4万2,000人を雇用し、年間売上が約170億ユーロに上るコカ・コーラの世界最大規模のボトラー企業。これほどの規模では、需要予測が1〜2%ずれるだけで在庫コストや機会損失が数十億円単位に膨らむ。
従来の計画プロセスは、各国・地域の担当者がExcelで実績を集計し、プロモーションや季節変動を手動で補正するバッチ処理が中心だった。月に数回しか見直せない計画では、新商品の投入や急なキャンペーン変更への対応が遅れ、欠品とデッドストックが繰り返し発生していた。需要の波が読めなければ、どれだけ物流を最適化しても後手に回り続ける。
SAPのAI需要予測が複数データを統合して毎日自動更新
CCEPはSAPとの€1B(約1,500億円)規模のデジタル変革プログラムの一環として、SAP Integrated Business Planningを全社展開した。IBPのAI需要予測は、POS(販売実績)・プロモーション計画・天候データ・地域ごとの消費傾向といった複数のデータソースを統合し、人間が手動で集計しなくても毎日最新の需要推計を自動生成する仕組みになっている。
月次・週次でまとめて見直すバッチ処理から、常時稼働型の自動更新モデルへの転換が最大の変化だ。担当者の役割は「データを集めて補正する仕事」から「AIが提示した予測をレビューして意思決定する仕事」へとシフトした。計画業務の重心が変わった。
6%の精度向上が持つ実際のインパクト
需要予測精度は6%向上した。数字だけ見ると控えめに映るが、CCEPが年間で扱う製品量の規模を考えると、欠品防止と廃棄削減の合算効果は相当なものになる。購買コストが削減され、欠品(機会損失)と過剰在庫(廃棄・保管コスト)という相反する2つの損失が同時に改善された。DHLがAI予知保全で配達精度を12%向上させた事例と同様、サプライチェーン全体への波及効果は数字が示す以上に大きい。
なぜうまくいったか——「更新頻度」の変革という核心
成功の要因は「予測の更新頻度を上げた」ことに尽きる。月次バッチでは変化に気づいたときにはすでに遅い。SAP IBPがデータを日次で取り込んで需要推計を継続的に更新することで、プロモーション変更や急な需要変動を早期に検知し、在庫計画へ即座に反映できるようになった。AIが季節変動・プロモーション効果・地域特性を同時に加味することで、従来は担当者の経験と勘に頼っていた補正作業が自動化された。
中堅企業でも使える「予測更新頻度を上げる」という発想
SAP IBPは中堅企業向けのプランも用意されており、類似のAI需要予測機能は他のERPやSCMツールにも搭載が進んでいる。調達チームがAIエージェントで物流トラブルを先読みする手法と組み合わせることで、サプライチェーン全体の最適化をさらに広げることも可能だ。CCEPのような大企業でなくても、考え方は応用できる。月次の計画サイクルを維持しながらAIで更新頻度だけ上げる実装でも、欠品率や在庫回転率の改善効果は出やすい。在庫管理担当者が「自分の経験でカバーしてきた部分」をAIに任せる最初の一歩として、AI統合型プランニングツールを検討する価値は十分ある。
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在庫の「欠品と過剰」が同時に起きる状況、現場の担当者にはリアルに刺さる話だと思います。
今回の事例で印象的だったのは、6%という数字よりも「月次バッチから毎日更新へ」という運用モデルの変化です。予測の精度より更新頻度を上げること自体が、担当者の働き方を変えているんですよね。データ集めに追われず、レビューと意思決定に集中できる状態はかなり違う。
CCEPほどの規模でなくても考え方は使えるので、自社の在庫計画担当の方にぜひ見せてみてください。