PwCがMicrosoft 365 Copilotを活用し、100カ国以上・23万人超への全社展開を実現。2025年10月の1ヶ月だけで870万アクションを実行し、50万時間以上の業務余力を解放した。
規模が大きいほど「PoC止まり」になるパラドックス
PwCはコンサルティング・会計監査・税務をグローバルに展開する世界最大級のプロフェッショナルサービスファームだ。100カ国以上に30万人超の人材を抱える規模感は、AI導入に独特の課題をもたらしていた。
「試験導入した数千人では効果が出た。でも全社展開は別の話」──多くの大企業が直面するこの壁を、PwCも抱えていた。ガバナンス、ライセンス管理、利用率の維持、ROIの可視化。規模が大きくなるほど課題が増え、PoCで終わる組織は少なくない。
23万人への展開を支えた設計思想
PwCが取った方針は「個人の生産性ツールとして配る」ではなく、「業務フローにCopilotを組み込む」だった。
メール起草・会議要約・調査レポートの下書きなど、繰り返し発生する情報処理工程をCopilotに先行させ、その結果を人間がレビューして判断する。こうした「AIが前段を担う」設計を業務単位で整備することで、ツールが「便利なオプション」から「仕事のインフラ」に変わった。
展開にあたってはMicrosoft Copilotスタジオや Microsoft Foundryも活用し、カスタムエージェントの構築にも着手している。単なるライセンス配布でなく、業務別のAI活用設計を積み重ねた結果、グローバルワークフォースの54%が週次でAIツールを利用し、平均週9プロンプトを実行する定着率を達成した。
数字が証明した大規模展開の成果
結果は具体的な数値として出ている。2025年10月の単月で、Copilot上で870万アクションを実行。50万時間以上の業務余力を解放した。
コスト面でも、Copilot活用で1.5億ドル(約220億円)、プラットフォーム統合による効率化で2,500万ドルの削減を実現している。コンサルティングファームとして「自社が最大の実証フィールド」になることで、クライアントへの提案にもリアリティが増している。
なぜここまでの定着率を実現できたか
PwCの成功要因のひとつは「測定の徹底」だ。週次で利用率・アクション数・業務別の効果をトラッキングし、成果が出ていない部門には追加サポートを入れる仕組みを設けた。
もうひとつは「目的の明確化」。「Copilotを使おう」ではなく「この業務のこのステップをCopilotにやらせる」という具体設計を先行させた。月13,000時間削減を達成したQuilterの事例でも同様に、特定業務(ポストコール処理)へのCopilot適用が成果につながっている。
自社への応用ポイント
PwCの事例が示すのは「全社展開の前に業務設計が必要」という原則だ。
まず「どの業務のどのステップを置き換えるか」を決める。その業務のユーザーにCopilotを試用させ、効果を測定する。効果が確認できた業務から横展開する。この順番を守ることで、大規模展開でも定着率は上がる。AI推進を任された情シスが最初の3ヶ月でやることの中でも、業務設計の先行が最初の重要ステップとして挙げられている。
54%の週次利用率・870万アクション/月という数字は、偶然の産物ではない。「AIを配る」から「AIで業務を再設計する」への意識転換が、PwCが大規模展開で成果を出した最大の要因だ。
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「うちはPwCほど大きくないから関係ない」と思った方、ちょっと待ってください。
870万アクション/月という数字より、「平均週9プロンプト」のほうが実は腹落ちしませんか。1日2回弱、AIに作業を投げている──それだけで50万時間という積み重ねになる。規模は関係なくて、習慣が成果を作るんです。
まずは自分の業務の中で「このステップだけCopilotに先にやらせてみよう」を一つ決めてみましょう。PwCの23万人も、そこから始まっています。