Klarnaが独自開発のAIアシスタントを全面投入し、カスタマーサービス対応の67%を自動化。年間4,000万ドル(約60億円)のコスト削減と、顧客対応時間の80%短縮を達成した。
後払いビジネスが抱える問い合わせの構造的問題
Klarnaはスウェーデン発のBNPL(後払い決済)サービスで、45カ国以上・1億5,000万人超のユーザーを抱える。
後払いは便利な反面、「支払い期日はいつ?」「返品後の残高はいつ戻る?」「この請求は何?」という問い合わせが大量に発生する構造だ。決済件数が増えるほど問い合わせも増え、2,000〜3,000人規模のCSチームでも処理が追いつかない状態が続いていた。スピードを求めるユーザーに対し、平均11分という応答時間は明らかに長すぎた。
OpenAI GPT-4ベースのAIアシスタントをCS全面展開
2024年初頭、KlarnaはOpenAI GPT-4をベースに社内開発したAIアシスタントをほぼすべての一次CS対応に投入した。対応言語は35言語以上。返品手続き・支払い確認・アカウント管理など、答えが決まっている問い合わせをAIが自律処理する。
以前は担当者が一つひとつ手順を案内していた作業が、AIとのチャットで完結するようになった。ユーザーは営業時間外でも即座に回答を得られる。
700人分の業務量を代替した数字
導入から1年で成果が数字に出た。CS対応の67%をAIが単独解決し、顧客対応時間は平均11分から2分以内に短縮。年間コスト削減は約4,000万ドル(約60億円相当)で、人間換算で700人分の業務量を代替した計算になる。再問合せ率も25%下がった。
再問合せ率の低下は重要な指標だ。単に返答しているのではなく、問題が実際に解決されていることを示す。給与前払いサービスのWagestreamがGeminiで問い合わせの80%を自動解決した事例と同様に、定型処理の自動化は品質を維持しながら機能することが証明されつつある。
全自動化で失敗し、ハイブリッドモデルへ転換
道のりは一直線ではなかった。全面展開した初期、複雑なケースや感情的な問い合わせで品質が低下した。返金条件の判断が必要なケースでAIの回答に誤りが混じることもあった。
Klarnaはこれを受けてハイブリッドモデルへ移行。AIが定型処理を担い、複雑・感情的なケースは人間のエージェントへエスカレートする仕組みを整えた。WileyがSalesforce Agentforceで繁忙期CSを再設計した事例と同じように、AIと人間の役割分担を明確に設計したことが安定した成果につながっている。「全自動化が失敗だった」と正直に公表し、設計を修正したことも、この事例の信頼性を高めている。
自社CSへの応用ポイント
Klarnaの事例が示す教訓は規模を問わない。
まず「AIで解決できる問い合わせ」と「人間が必要な問い合わせ」を分類することから始める。支払い確認・残高照会・手続き案内など答えが一意に決まる問い合わせはAIが得意だ。クレームや感情的なフォローアップは、人間の対応が顧客の信頼を生む。
完全自動化ではなく「AIが70%を処理し、人間が残り30%の判断業務に集中する」設計から入ることで、Klarnaが示したROIに近づきやすい。
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CSの問い合わせ対応って、地味だけど本当に消耗する仕事ですよね。同じ質問に何百回も答える日々。
Klarnaが「全自動化で失敗した」と正直に公表したのが印象的でした。うまくいかなかったことを隠さずに改善した過程を示してくれるのは珍しく、そこに一番の学びがあります。
AIと人間の得意分野を分ける設計から始めれば、60億円とまではいかなくても、今のCS業務は確実に軽くなります。ぜひ試してみてください。