nib(NIBヘルスインシュアランス)がAIアシスタント「Nibby」を活用し、ヒトによるデジタル問い合わせ対応の60%を自動化、累計$22M(約32億円)のカスタマーサービスコスト削減を実現した。

加入者が増えるほど問い合わせも増える——保険CSの構造的な問題

nibはオーストラリアの民間健康保険市場で200万人超の加入者を持つ大手保険会社だ。健康保険ビジネスでは、加入者が増えると「給付申請の進捗を教えて」「保険料の引き落とし日はいつ?」「申請書の提出先は?」といった定型問い合わせが比例して増える。FAQページを充実させても加入者は電話を選ぶ。チャットサポートを設けても複雑な質問が混ざれば「担当者に接続します」で終わる。nibが直面していたのは、人員を増やすか対応品質を下げるか——という二択だった。

ポータル・アプリ・音声の3チャネルに同一AIを展開した

2021年、nibはAIアシスタント「Nibby」をローンチした。Rasa(会話AIプラットフォーム)とIBMの技術を採用し、オンラインメンバーポータル、モバイルアプリ、音声の3チャネルに同一のアシスタントを展開した。定型問い合わせはNibbyが完結させ、複雑な案件だけ有人オペレーターに引き継ぐ。チャネルをまたいでも同じNibbyが答えるため、加入者が「何度も同じことを説明させられる」ストレスを解消した。北欧ホテルチェーンのStrawberryが構築した社内AIエージェント「Scout」と同様、専用のアシスタントを一から設計したことが、汎用ツールでは届かない精度を生んだ。

累計400万件超を処理し、32億円のコストを削減

ローンチから数年で、Nibbyは累計400万件超の問い合わせを処理した。ヒトが対応していたデジタル問い合わせの60%をAIが自動完結。電話入電は15%減少し、累計削減コストは$22M(約32億円)に達した。営業時間外の音声問い合わせにも対応できるようになり、加入者は深夜でも即座に回答を得られる。CSオペレーターは複雑な給付相談や契約変更など、本来の判断が必要な業務に集中できる環境が整った。

定着した理由——「AIが失敗したときの出口」を先に設計した

Nibbyが単なるFAQボットで終わらなかった理由は、AIが答えられないときの動線を最初から組み込んだことにある。「解決できなければヒトへ」という自然な引き継ぎが機能するため、加入者は「どうせ答えてくれない」と諦める前に質問を完結できる。nibは自己解決率を継続的に測定し、Nibbyが苦手な質問パターンを特定して改善を繰り返した。技術の選定より、引き継ぎ設計と継続改善のサイクルが成否を分けた。

「繰り返し質問の多い業種」ほど転用しやすいアプローチ

nibの事例が示すのは、CS自動化は「全部をAI化しようとすると失敗する」という点だ。定型質問と複雑な相談を分け、前者だけをAIに任せる。複数チャネルに同一のAIを展開することで、顧客体験を壊さずにコストを下げられる。Hargreaves LansdownがMicrosoft 365 Copilotで顧客対応文書を4時間から1時間に短縮したように、金融・保険業界ではAIによる顧客対応の効率化が加速している。

保険・医療・公共サービスなど繰り返し質問が多い業種ほど、nibのアプローチは転用しやすい。まず自社のCS問い合わせログを開き、「月100件以上ある質問」をリストアップすることから始められる。

ドリップドリップ(執筆)

CSチームが問い合わせ対応でいっぱいいっぱいになっている——そういう状況、思い当たる人も多いのではないでしょうか。

Nibbyが面白いのは、AI化を「全部」やろうとしていないところです。定型はAIに任せて、難しいものは人に渡す。この「出口の設計」があるから加入者が安心して使えるし、4年以上継続できているのだと思います。

「月100件以上ある質問」のリストアップ、小さな一歩に見えますが、そこが変革の入口になります。

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