Unileverが Pymetrics と HireVue を活用し、採用時間を90%短縮しながら年間£1M(約2億円)のコスト削減を達成しました。

年間180万件の応募という「処理しきれない現実」

Unileverは世界190カ国以上で事業を展開し、年間180万件を超える応募を受けています。それを少数のHR担当者で処理し、適切な人材を見つけ出さなければなりません。

以前は採用担当者が書類をひとつひとつ確認し、電話面接を行い、対面面接に進める候補者を選んでいました。年間数万時間の工数がかかるだけでなく、担当者の主観が入りやすく、採用の質と公平性に課題がありました。

優秀な候補者が書類審査で落ちるケース、採用担当者との相性で合否が変わるケース——どちらの損失も見えにくいまま蓄積していました。

ゲームと動画面接で選考を自動化する

Unileverが選んだのは2つのAIツールの組み合わせです。

最初のステップはPymetricsによるゲーム認知テストです。応募者はスマートフォンから約20分のゲームに参加します。記憶力・注意力・感情認識などの認知特性をゲーム形式で計測し、AIが「採用後に活躍しやすい人材」のパターンと照合します。学歴や出身校ではなく、能力特性で選ぶアプローチです。

次のステップはHireVueによるAI動画面接です。候補者は自宅から設問に答える動画を録画し、AIが表情・話し方・回答内容を分析します。採用担当者が候補者ごとにリアルタイムで時間を合わせる必要はありません。

この2段階のスクリーニングを通過した候補者だけを最終面接に進める設計にしました。量をさばく工程をAIに任せ、人は本当に判断が必要な場面にだけ関わる構造です。

90%短縮、年間2億円削減、5万時間を回収

採用プロセス全体の所要時間は90%短縮しました。書類審査から内定まで数ヶ月かかっていた工程が、数週間に収まるようになりました。

候補者側の体験も変わりました。18ヶ月間で、応募者全体が選考プロセスに費やす時間の合計が50,000時間削減されました。選考参加のハードルが下がり、多様な背景を持つ候補者が応募しやすくなりました。

採用コストは年間£1M(約2億円)の削減です。採用担当者の工数だけでなく、外部エージェンシーへの依存コストも減りました。さらに、採用した社員の多様性指標が向上しています。ゲームと動画で評価するスクリーニングは、特定大学出身者に偏らない候補者プールを生み出しました。

「量をさばく」から「判断に集中する」へ

成功の核心は、AIが量をこなすことで人が判断に集中できる構造を作ったことです。

AIスクリーニングが書類と動画面接の大量処理を引き受けることで、採用担当者は最終選考に残った候補者との会話に時間をかけられるようになりました。候補者体験の設計、組織文化との適合、オファー交渉——人がやるべき判断に集中できる体制です。

同様のアプローチはHR全般に広がっています。Britannia IndustriesがEdrevel AIで人事評価プロセスを75%短縮した事例でも、「AIが量をこなし、人が判断する」設計が機能しています。大企業のHR部門でのAI活用は、共通したパターンが見えてきています。

HR担当者が今すぐ試せること

Unileverのような全社AI採用はすぐには難しいとしても、着手点は明確です。

まず「どの選考段階が最も工数を食っているか」を計測してみることです。書類審査で何件の応募があり、そこに何時間かかっているかを数字で把握します。具体的な課題感がつかめれば、AI採用ツールの検討が現実的な選択肢になります。

採用コストを抑えながら組織を強くする方法は採用AIだけではありません。Spotifyが採用なしで内製AIツールにより生産性を2倍超にした事例は、既存メンバーの生産性を高める別のアプローチとして参考になります。どちらの道にしても、「AIに何を任せ、人が何をするか」を設計することが出発点です。

ドリップドリップ(執筆)

採用って、頑張った時間が結果に直結しにくいのがつらいですよね。書類を何百枚見ても、本当に活躍する人を選べているか自信が持てない。

Unileverの事例で面白いのは、AIが「選ぶ」のではなく「絞り込む」役割に徹している点です。最終判断はあくまで人がする。その設計が、多様性向上という予期しない成果にもつながっていました。

採用の量的な負担をAIに渡すだけで、採用の質が上がる可能性があります。まず自社の選考工数を計測するところから始めてみてください。

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