「来月からSAP Jouleを展開してほしい」と言われたとき、何から手をつければいいか分からなくなるケースは多いです。ERP自体の運用だけでも複雑なのに、AIエージェントの設定、社員への説明、効果測定まで重なると、優先順位が見えなくなります。
Ericssonはこの難しさを乗り越えた会社です。SAP環境にAIを組み込み、年間90,000時間超の業務削減を達成しました。成功の理由はJouleの性能ではなく、展開前に何を準備するかを絞り込んだことでした。
どの業務から始めるか絞り込む
まずやるべきことは「どの業務が一番時間を食っているか」を可視化することです。SAP Jouleは経費承認、マスターデータ更新、レポート生成、社内問い合わせ対応など幅広い業務に使えます。ただ、最初から全部やろうとすると優先順位がなくなり、どこにも成果が出ないまま終わります。
繰り返しが多く、判断の少ない業務が狙い目です。毎月末の棚卸しデータ確認、他部署からの定型問い合わせへの回答、週次レポートのダウンロードと配布——こういった作業を書き出すだけで、どこから着手すべきかが見えます。全社展開の前に1部門・1業務で試す判断も、この段階で決めてしまいましょう。
現場の「困りごと」を先に聞く
設定よりも難しいのが運用設計です。Jouleに自然言語でSAPの情報を聞けるようになっても、現場の担当者が「何を聞けばいいか」「どこまで使っていいか」を分かっていなければ、ツールは使われないままになります。
展開前に2〜3人の現場担当者と話して、「毎日やっている面倒な作業は何か」「よく引っ張るデータはどれか」を具体的に聞いてください。その情報でJouleの初期設定や使い方ガイドを作ると、立ち上がりが早くなります。AI推進全体のロードマップと連動させると、個別ツールの導入がより整合的に進みます。
展開前に「比較用の数字」を記録する
Ericssonの90,000時間という数字は、展開前後の記録があったから出てきた数字です。ベースラインを取っていなければ、効果が出ても「なんとなく楽になった気がする」で終わり、次の予算を取るときに説得力がありません。
業務時間、問い合わせ件数、承認のリードタイムなど、測れる指標を2〜3つ決めて、展開前の数字を記録しておいてください。Excelで今の作業時間をメモするだけでも構いません。3ヶ月後には経営層への報告書として使える材料になります。
Jouleの機能を覚えるより先に、この3つを準備しておくだけで、ERP展開の成果は大きく変わります。
ERP展開にAIまで重なって……というプレッシャー、すごくよく分かります。
でもEricssonの事例を見ると、Joule自体の難しさより「何から始めるか」を決めたことが成果につながっています。この記事の3つは、その決め方を整理したものです。
完璧に準備しなくても大丈夫です。まず1業務で動かしてみると、見えてくることがたくさんあります。