SoFi TechnologiesがSierra AIを活用し、週50,000件超の問い合わせの61%をAIが自動解決、チャット対応のNPSを33ポイント改善した。

急増する問い合わせと人手の限界

SoFiはアメリカの総合フィンテック企業だ。銀行、ローン、投資、保険を1つのアプリで提供し、会員数は800万人を超えている。規模の拡大とともに、カスタマーサポートへの問い合わせも急増した。

金融の問い合わせは複雑になりがちだ。ローンの返済条件の確認、口座間の送金エラー、クレジットカードの利用制限解除——どれも担当者が個別に確認しながら対応する必要がある。採用・研修コストは膨らみ、ピーク時には対応が追いつかなかった。顧客の待ち時間は延び、NPSは下がる一方だった。コスト削減とCX向上を同時に実現する方法が必要だった。

SierraのAIエージェントを顧客対応の一線に配置

SoFiが選んだのはSierra AIだ。AIエージェント専門のスタートアップで、2026年5月に9億5,000万ドルの資金調達を発表し注目を集めた。単なるFAQボットとは設計が違う。

自然な会話形式で問い合わせを理解し、口座照会・手続き案内・問題解決を自力でこなす。「FAQに誘導して終わり」ではなく、「その場で完結させる」設計だ。金融規制への対応も組み込んだ。正確な情報提供を担保しつつ、自力で解決できない案件は人間のエージェントにスムーズに引き継ぐ流れを整えた。MedtronicがTeneo AIでCS業務を刷新した事例でも、AIと人間の役割分担を明確にしたことが成功のカギになっている。

61%自動解決、NPSは33点改善

結果は数字ではっきり出た。週50,000件超の対話をAIが処理し、61%を人の手なしに解決した。チャット対応のNPSが33ポイント改善した。

単に問い合わせをさばいた数字ではない。顧客が「ちゃんと解決された」と感じた証明だ。自動化率を上げるとNPSが下がるケースは珍しくない。SoFiはその罠を踏まなかった。同じ金融サービス領域では、オーストラリアの保険大手nibがAIアシスタント「Nibby」でCS問い合わせの60%を自動化し累計32億円のコスト削減を達成した事例も参考になる。

成功の軸は「渡すタイミング」の設計にある

成功のポイントは2つある。1つは解決の境界を明確にしたことだ。SierraのAIエージェントは対処できない問い合わせを無理に処理しない。複雑なケースはすぐ有人に渡す。この割り切りが顧客の不満を防いだ。

もう1つは金融規制への適合だ。不適切な情報提供が法的リスクに直結する金融業界で、規制の枠内で動くエージェントを最初から設計したことが信頼の土台になった。CX向上とリスク管理を同時に実現できたのは、この前提があったからだ。

まず「問い合わせの分類」から始める

AI導入でよくある失敗は「全部自動化しよう」という発想だ。最初は絞るほうが結果が出やすい。問い合わせを「AIが完結できる」「AIが補助できる」「人が必要」の3層に分けてみる。SoFiの61%という数字は、最初から目標にしていた数字ではなく、この設計の積み重ねで到達した結果だ。

まず確実に解決できる範囲だけを自動化し、顧客体験が上がれば範囲を広げる。CS担当者が見落としているAIエージェント導入の始め方では、この分類の実践的な進め方も取り上げている。コンタクトセンターにAIを入れようとしているなら、まずこの整理から始めると失敗が少ない。

ドリップドリップ(執筆)

問い合わせが増えても採用が追いつかない、というのは規模を問わず多くの企業が抱えるリアルな悩みですよね。

SoFiのケースで印象的だったのは、「解決できないものは渡す」という設計を正直に徹底したことで、NPSまで改善したという点です。自動化してCXが下がる、という逆説を避けられたのはここが大きい。

AIに任せる範囲を決めるのは、実は人間の仕事です。まずその整理から始めてみてください。

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