【The Permanente Medical Group】がAIスクライブ「Abridge」を活用し、7,260人の医師が年間15,791時間の記録業務から解放された。
診察後のカルテ入力が、医師の時間を侵食していた
Kaiser Permanente傘下のThe Permanente Medical Groupは、米国最大規模の統合医療システムの一つです。7,000人を超える医師が、年間数百万件の診療を行っています。その日々に長年ある共通の問題がありました。
診察が終わっても、仕事は終わりません。電子カルテへの記録、診断コードの入力、フォローアップメモの作成——多くの医師が1日1〜2時間をこの作業に費やし、退勤後に続きを行うことも珍しくありませんでした。患者と向き合いたくて医師になったのに、パソコンに向き合う時間の方が長くなる。バーンアウトの根本にある問題の一つです。
診察中の会話がそのままカルテ草稿に変換される
2024年、The Permanente Medical GroupはAIアンビエントスクライブ「Abridge」の本格展開を開始しました。診察中にマイクをオンにするだけ。AIが会話をリアルタイムで処理し、診察終了後には構造化されたカルテ草稿が自動生成されます。医師は確認と修正だけすればいい。
1年間で7,260人の医師に展開し、2,576,627件の診療に適用。この成果は2026年にNEJM CatalystとAMAが発表した大規模実証研究によって統計的に証明されました。
年間15,791時間の先にある変化
削減された15,791時間は、医師一人あたり年間約2時間分の記録業務が消えた計算です。小さく聞こえるかもしれませんが、日々の診療の積み重ねとして捉えると意味は大きく変わります。
「診察中に患者の目を見て話せる時間が増えた」「夜中にカルテを打つことがなくなった」——現場の声は、数字の先にある変化を示しています。記録業務の削減は、患者満足度と医師のバーンアウト軽減の両方に波及します。
7,000人規模の展開を支えた3つの要因
録音して後から文字起こしするツールとは異なり、Abridgeは診察の流れに沿ってリアルタイムでカルテ草稿を構造化します。医師が最後に確認・修正するフローが残るため、AI任せにしすぎる不安を取り除けました。
Kaiser Permanenteが持つ全国規模のネットワークと標準化された電子カルテ基盤が、大規模展開のインフラとして機能しました。現場からのフィードバックをもとに継続改善を続けたことも、定着率の高さに貢献しています。MedtronicがTeneo AIで医療機器CSを10週間で刷新した事例と同様に、医療分野でのAI活用は現場の「使いやすさ」が導入成否を分けます。
医療機関が次の一手を考えるとしたら
AIスクライブの導入は、大規模医療法人でなくても始められます。必要なのは医師の合意と電子カルテとの連携。診療科単位での試験導入から入るのが現実的です。
記録業務の自動化は業務効率の話にとどまりません。医師が患者に向き合える時間が増えることで、診療の質と患者体験の両方が変わります。健康保険会社nibがAIアシスタントで問い合わせの60%を自動化した事例のように、医療・ヘルスケア分野ではAIが業務改善を超え、サービスの質そのものを変え始めています。
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医師のバーンアウトが社会問題になっているのを見るたびに、診察以外の事務作業の重さが気になっていました。
Abridgeが「カルテを書く時間」を「患者を見る時間」に変えているとわかって、これがAI活用の本来の姿だと感じます。
日本の医療現場でも、まずは一診療科から試してみる価値は十分あると思います。