提案書を作るたびに「あなたはBtoB営業担当で、相手は製造業の中堅企業です。読みやすいビジネス文体で」と打ち込んでいる。先週も、今週も、おそらく来週も。この繰り返しに気づいたなら、止める方法がある。
GeminiのGemsで「毎回の前置き」をなくす
Geminiには「Gems(ジェムズ)」という機能がある。使い回しできる自分専用のカスタムAIアシスタントを作れる仕組みで、指示や設定を名前つきで保存できる。「提案書用Gem」「メール文案用Gem」のように目的別に作っておけば、次に使うときはそのGemを選ぶだけでよい。
毎回ゼロから「役割」を説明する必要がなくなる。Gemを開いた瞬間から、Geminiはすでにあなたの仕事の文脈を知っている状態で動き始める。
営業・マーケが使える設定例3つ
まず「提案書ドラフト用」。「あなたは中小企業向けSaaS営業です。提案は結論ファーストで書き、専門用語は避けてください。箇条書きより文章を優先し、段落ごとに読みやすい長さにしてください」と設定する。これだけで、毎回の指示入力が「A社向け提案書を書いて」の一言で済む。
次に「顧客向けメール用」。「相手は決裁者クラスの方です。丁寧だが簡潔に、3段落以内で。文末の署名は【氏名】【会社名】の形式で」と入れておく。フォーマットまで固定すると、編集の手間も大幅に減る。
もうひとつは「競合比較調査用」。「競合との比較は機能・コスト・サポートの3軸で整理してください。感情的な表現は使わず、事実ベースで」と設定すると、毎回一定のフォーマットで情報が整理される。提案書やビジネス文書をAIに任せる際の前提知識と組み合わせると、より精度が上がる。
資生堂ジャパンが示した「前提設定の効果」
こうした「事前にコンテキストを渡す」という発想の効果は、企業規模でも実証されている。資生堂ジャパンはGoogle CloudのGeminiベースのAIエージェントを活用し、担当者が1回2〜3時間かけていた化粧品原料の探索業務を数分に短縮した(参照:Google Cloud 資生堂ジャパン事例)。毎回ゼロから説明するのをやめ、AIに業務の前提を組み込んだことが、95%もの時間圧縮につながっている。
個人のGemsも同じ原理だ。「役割・文体・フォーマット」を一度設定すれば、そこに使うたびの30分が積み上がっていく。
Gemsを作る3ステップ
gemini.google.comを開いて、左サイドバーの「Gems」から「新しいGemを作成」を選ぶ。名前を決めて、指示欄に設定を書く。このとき「役割」「口調・文体」「出力フォーマット」の3点を盛り込むと効果が高い。
最初の1つを作るのに10分かからない。使ってみて「この指示が足りなかった」と感じたら編集して保存するだけでよい。1ヶ月も使い込めば、自分の仕事のクセに合ったAI補佐官が育っている。
コピペで使えるプロンプト集
① 提案書ドラフト用Gems指示テンプレート
Geminiに提案書のドラフト作成を毎回任せるとき
あなたは【業界・サービス名(例:中小企業向けSaaS)】の営業担当です。 提案書は以下のルールで書いてください。 ・結論ファーストで書く(なぜ必要かを最初に) ・専門用語は避け、経営者が読んでわかる言葉で ・箇条書きより文章を優先。段落ごとに読みやすい長さで ・提案書の構成:①現状課題 ②解決策の概要 ③導入後の変化 ④次のステップ 相手企業:【会社名・業種・規模】 提案内容:【製品・サービス名と訴求ポイント】
② 顧客向けフォローメール用Gems指示テンプレート
商談後や提案後のフォローメール文案をGeminiに作らせるとき
あなたは【会社名・氏名】のビジネスメール担当です。 以下のルールでメール文案を作成してください。 ・相手は【決裁者/担当者】クラスの方 ・丁寧だが冗長にならず、3段落以内で収める ・件名も必ず含める ・文末署名:【氏名】|【会社名】|【電話番号】 今回の状況:【商談の内容・次のアクションを2〜3行で記入】 メールの目的:【次のアポ獲得/資料送付の案内/お礼 など】
③ 競合比較まとめ用Gems指示テンプレート
競合他社との比較資料をGeminiに整理させるとき
あなたは市場調査担当です。競合比較は以下のルールで整理してください。 ・比較軸:機能・コスト・サポート体制・導入実績の4軸 ・感情的な表現は使わず、事実ベースで記述 ・各社の強み・弱みを1〜2文でまとめる ・表形式または箇条書きで見やすくまとめる 比較対象:【自社名】vs【競合A】vs【競合B(あれば)】 目的:【社内資料/顧客向け比較説明/提案書添付 など】 入手できている情報:【知っている情報をここに貼る】
毎回同じ指示を打ち込みながら「またこれか」と思った経験、きっとありますよね。
Gemsを一度設定してしまえば、Geminiが最初から文脈を知った状態で動いてくれます。積み重ねるほど、使うたびの「前置き時間」がゼロに近づいていくのが気持ちいい変化です。
まず提案書用を1つだけ作ってみてください。10分後には「なぜもっと早く設定しなかったんだろう」と思うはずです。