部署のAIルールを整えて、全員が同じツールで提案書を書き始めたのに、文体がバラバラになっている——そういう状況はよく起きています。同じ「提案書を作って」という指示なのに、ある人の文書はです・ます調で、別の人は体言止めが多め。構成も、結論から始まる人と背景説明から入る人で分かれる。見た目の統一感がなく、上司が読み比べると書き手の癖が透けてしまいます。
原因はほとんどの場合、AIへの指示に「型」を渡していないことです。AIは指示に忠実ですが、指示がなければ自分なりに解釈して出力します。文体を指定しなければ毎回違う文体になり、構成を決めなければその場その場で変わります。
カスタム指示に「型」を書き込む
ChatGPTには「カスタム指示」、Claudeには「プロジェクトの指示」、Geminiには「Gemを作成」のシステム指示欄があります。ここに文体・構成・語調の条件を書いておけば、誰が同じプロジェクトを使っても、出力の型が揃います。
設定する内容は3つです。ひとつは文体(ですます調で統一、体言止めは使わない)。次に構成の型(結論→根拠→具体例の順、見出しはh2まで)。最後に語調(読み手は経営層、専門用語には補足説明を添える)。この3点を書き込むだけで、AIの出力は安定します。チームで同じClaudeプロジェクトを共有するか、同じカスタム指示テンプレートを配布するかで、実質的な統一が実現します。
具体的なプロジェクト指示の例
以下は、営業部門向けの提案書プロジェクト指示の例です。
「文体はですます調で統一する。構成は【課題提示→解決策→実績・根拠→アクション】の順で作成する。読者は経営層または意思決定者を想定し、専門用語には簡単な説明を1行添える。箇条書きは1つの見出しにつき最大3点まで。文字数は500〜800文字を目安にする」
これを一度プロジェクトに設定しておけば、以降は「先週の商談内容を元に提案書を作って」と短い一文を送るだけです。担当者が毎回ゼロから構成を考える必要がなくなり、作業時間が従来の半分以下になるケースも珍しくありません。AIへの指示の精度を高めるコツは、AIに進捗報告を頼んでもうまくいかない人の共通点でも触れていますが、要は「出力フォーマットを先に決める」ことです。
文書の品質が揃うと、レビューが変わる
文書品質の標準化がどれほどの効果を生むか、金融機関でも実証されています。京都銀行は2026年7月、NTTデータのLITRON® Generative Assistantを導入し、融資稟議書の作成を自動化しました。審査役の評価における合格ライン到達率が約30%から約95%に向上し、年間最大11,700時間の業務削減を達成しています。
稟議書の「型」とデータ収集・要約をAIが担い、担当者は内容の確認・調整に集中できるようになった——これが品質と速度を同時に改善した要因です。大規模な金融システムの話に聞こえますが、構造は一緒です。AIに何をどのように書かせるかを先に決めること。それだけで、出力の質は変わります。
提案書や報告書の文体が統一されると、最初に変わるのはレビューの速さです。読む側が「この人はどういう構成で書くのか」を毎回考えなくてよくなり、内容の判断に集中できます。修正コメントも「構成を変えてほしい」から「この数字の根拠が欲しい」という中身の話に変わります。担当者が異動・退職で変わっても、プロジェクト指示が残っていれば同じ品質が維持されます。
コピペで使えるプロンプト集
① 提案書の文体・構成を統一するプロジェクト指示を作成する
ChatGPT・Claude・Geminiのカスタム指示欄に貼り付ける「社内文書の型」を設計する
あなたは社内文書の標準化を担当する編集責任者です。 以下の条件を満たす「AIプロジェクト指示文」を作成してください。 【文書種別】:【例:営業提案書・業務報告書・議事録】 【読者想定】:【例:経営層・部門マネージャー・取引先】 【文体の方針】:【例:ですます調・体言止め禁止】 【構成の型】:【例:課題→解決策→根拠→アクション】 【文字数の目安】:【例:600〜900文字】 【避けるべき表現・禁止事項】:【例:「〜と思われます」などの曖昧表現、専門用語の無断使用】 出力は「そのままAIのプロジェクト指示欄にコピーして貼り付けられる形式」でお願いします。説明文は不要で、指示文本体だけを出力してください。
② 既存の提案書から「型」を逆算して抽出する
社内の優秀な提案書を参考に、AIへの統一指示文を自動生成する
あなたは文章構造の分析が得意なエディターです。 以下に貼り付ける提案書のサンプルを読んで、「この文書の構成・文体・語調の特徴」を分析し、同じスタイルの文書を生成できるAI指示文を作成してください。 【サンプル文書】: 【ここに社内の優秀な提案書を貼り付け】 分析の観点: - 文体(ですます調・だ・である調・混合) - 構成の流れ(結論先・背景先・課題解決型など) - 見出しの使い方(数・レベル・命名パターン) - 使われている語調・強調方法 出力形式:分析サマリー(3行以内)+AIプロジェクト指示文(そのまま貼り付けられる形式)
③ 部門別カスタム指示テンプレートを複数作成する
営業・人事・経理など複数部門向けにAI文書指示を一括で用意する
あなたは社内AI活用推進の担当者です。 以下の部門それぞれに合ったAIカスタム指示テンプレートを作成してください。各部門の文書の読者・目的・文体の違いを考慮して、使いやすい指示文にしてください。 【対象部門と主な文書種別】: - 【例:営業部門 → 提案書・見積もり説明文】 - 【例:人事部門 → 採用要件定義・社内通知文】 - 【例:経営企画 → 月次報告・会議資料要旨】 各テンプレートに含める内容: 1. 文体・語調の指定 2. 構成の型(見出しパターン含む) 3. 文字数・分量の目安 4. 避けるべき表現 出力は部門ごとに区切り、「コピーしてそのまま使える形式」でお願いします。
「型を渡してないだけで、こんなに違うのか」と気づいたとき、ちょっとスッキリしませんか。
カスタム指示を一度書いてしまえば、あとはAIが揃えてくれる。チームの誰が使っても同じ仕上がりになる、それがいちばんの発見です。
まず3行だけ書いてみてください。文体・構成・読者想定。それだけで、次の提案書から変わります。