月末の経費精算を見たとき、ChatGPTの請求が3件、Claudeが2件、Geminiが1件並んでいた——こういう話を情シス担当から聞く機会が増えています。部門がそれぞれ独自にAIツールを契約し、情シスには何も相談なし。気づいたときには社内のAI利用が野放しになっています。

放置すると、コストが見えないまま膨らみます。同じような用途に複数ツールが乱立すれば当然無駄が出る。セキュリティの観点でも、どの部門がどのAIに何を送っているかを把握できないのは問題です。

稟議を通さずに始められてしまう、という問題

AI系のSaaSは、クレジットカード一枚で部門単位から始められます。ChatGPTのTeamプランも、Claudeも、Gemini Advancedも、部門長がカードを持っていれば情シスを通さずに契約できます。DeepSeekは無料枠から始まるため、使っていても報告しない人が多い。

結果として情シスが気づいたときには複数ツールが乱立している、という状況が生まれます。ここから整理するために、3つのステップを踏んでいきます。

ChatGPT・Claude・Gemini・DeepSeekの使用量を3ステップで把握する

まず棚卸しです。全部門の経費申請・クレジットカード明細から、AI関連の支出をリストアップします。明細のCSVをChatGPTに貼り付けて「AI・SaaS関連の支出を抽出して、ツール名と部門ごとに集計してください」と頼めば、数十件の明細を10分以内に整理できます。

次は管理アカウントへの移行です。ChatGPT TeamやEnterpriseに移行すると、管理コンソールから部門別の利用状況・ユーザー数・アクセスログが確認できます。Microsoft 365 Copilotを使っている組織は、Microsoft 365管理センターで部門ごとのライセンス割り当てと利用量を一元管理できます。ClaudeについてもAnthropicの組織向けプランに移行することで、利用状況の管理が可能になります。

3ステップ目は月次レポートの自動化です。各ツールの管理コンソールからCSVをエクスポートして、スプレッドシートに集約する。Geminiに「この利用データから部門別の月次AIコストレポートのテンプレートを作って」と依頼すると、月1回コピペするだけのフローが完成します。

なお、この整理作業は社内でAIエージェントを展開する際のガバナンス設計とセットで進めると効果的です。コスト管理と権限設計を同時に整えることで、後から修正が必要な作業を減らせます。

野村総合研究所が選んだ「全社一本化」という方向

日本でも、AI利用を全社規模で管理する動きが進んでいます。野村総合研究所(NRI)は、OpenAI技術を基盤にした社内専用LLMを全社員約1万人に展開。2023年4月の稼働開始後、コンサルタントとエンジニアの利用率は80%超となり、累計利用回数は1,000万回を超えています。社内データを外部に送信しないプライベートLLMの構成により、情報漏洩リスクをゼロに抑えながら運用しています。

最初から自社LLMを構えるのは大規模な投資が必要ですが、NRIの取り組みが示すのは「管理できる状態を作ってから展開する」という順序の重要性です。まず既存ツールの把握から始め、管理コンソールで一本化できるものはまとめる。この積み上げが、将来的な全社AI基盤の整備にもつながります。

コストが見えると、AIの使い方が見えてくる

部門別の利用量を可視化すると、重複契約の解消で月10〜30%程度のAI関連支出が削減できるケースがあります。それ以上に価値があるのは、部門によってAIの使い方がまったく違うことがデータで見えてくることです。営業は要約と資料作成、開発はコード生成、マーケはコピーライティングと、用途がそれぞれ違う。何に効いているかがわかれば、どのツールに予算を集中させるかの判断ができます。

情シスに相談なしでツールが増えていく話、本当によくあるんですよね。悪意があるわけじゃなくて、みんなとにかく便利だから使い始めちゃう。

でも今回の記事で紹介した3ステップ、棚卸しだけなら今日の午後に始められます。まず「どこに何が入っているか」を把握するだけで、管理のしようがまったく変わります。

全部整えてから動こうとすると永遠に始まらないので、まず明細を引っ張り出すところだけやってみてください。

コピペで使えるプロンプト集

① 社内AIツールの利用状況を棚卸しするプロンプト

月次の経費精算データからAI関連の支出を整理したい情シス担当向け

あなたは情報システム部門のアナリストです。以下の経費申請・クレジットカード明細データから、AI・SaaS関連の支出を抽出してください。

【分析対象データ】
(明細のCSVまたはテキストをここに貼り付け)

出力形式:
・ツール名
・月額(1件ごと)
・契約部門(判明している場合)
・月間合計金額
・重複・類似ツールの一覧

AIツールとして認識する例:ChatGPT、Claude、Gemini、Copilot、Perplexity、DeepSeek、Midjourneyなど
情シス・IT担当コスト管理

② 部門別AIコスト月次レポートのテンプレートを作るプロンプト

各ツールの管理コンソールから取得したCSVデータを部門別にまとめたい

あなたは情報システム部門のレポート担当です。以下のAIツール利用データをもとに、経営会議に提出できる「部門別AIコスト月次レポート」のテンプレートを作成してください。

【利用データ】
(ツール名・部門・ユーザー数・利用量・金額のCSVをここに貼り付け)

含めるべき項目:
・部門別の月次コスト一覧表
・前月比の増減
・ツール別の利用率
・コスト削減の余地がある箇所のコメント

形式:スプレッドシートに貼り付けやすいMarkdown表形式で出力
情シス・IT担当レポート作成

③ 経営層向けAIツール一本化提案書を作るプロンプト

社内で乱立するAIツールを集約するための稟議・提案書を作成したい

あなたはIT部門のプロジェクトマネージャーです。以下の情報をもとに、経営層への「社内AIツール一本化提案書」を作成してください。

【現状情報】
・現在利用中のAIツール:【ツール名と部門名を列挙】
・月間コストの合計:【金額】
・主な課題:重複契約・セキュリティリスク・利用状況の不透明さ

【提案内容のポイント】
・管理コンソールで一元管理できるプランへの移行
・利用部門・用途の整理
・移行後のコスト削減見込み

出力形式:A4 1〜2枚に収まる箇条書き+まとめ文の構成で
情シス・IT担当企画・提案