月曜の朝、白紙のWordを前に手が止まる。先週の会議の議事録を清書し、部長に出す報告書のドラフトも今日中に書かなければいけない。何を書くかは頭にあるのに、最初の一文が出てこない。この「ゼロから書き起こす時間」こそ、WordのCopilotがいちばん得意とするところです。うまく使えば、下書きにかけていた30分が数分に縮みます。
WordでCopilotを呼び出す2つの入り口
WordのCopilotには入り口が2つあります。ひとつは、新しい段落の左余白に薄く表示されるCopilotのアイコン。ここをクリックすると、その場所に文章を生成させる指示が書けます。もうひとつは、リボンの「ホーム」タブ右側にあるCopilotボタンから開くチャット画面で、文書全体について質問したり要約させたりできます。書き起こしはアイコンから、読み込みや相談はチャットから、と覚えておくと迷いません。
Wordの下書きをCopilotに任せる3ステップ
下書き生成は、Copilotの機能の中で最も効果が分かりやすい部分です。手順はシンプルです。まず余白のアイコンを押して指示欄を開く。次に「何を、誰向けに、どんなトーンで」書くかを一文で伝える。最後に生成された案を読み、必要なところだけ直す。
指示の例はこうです。「取引先向けに、納期が1週間遅れることを謝罪しつつ、代替案を2つ添える丁寧なメール文を作成してください」。ここまで具体的に渡すと、あいさつから結びまで整った文面が返ってきます。公式の解説でも、指示は詳しいほど返る文章の精度が上がると明記されています。最初の一文を自分でひねり出す時間が、まるごと消えます。
できあがった文書を要約・書き換え・トーン調整する
Copilotはゼロから書くだけでなく、すでにある文章を整える作業も引き受けます。長い資料を渡されたとき、チャットで「この文書を5つの要点にまとめて」と頼めば、読む前に全体像がつかめます。数十ページの契約書や仕様書を斜め読みする手間が省けるわけです。
書き換えも得意です。直したい文を選択すると左余白にCopilotのアイコンが出るので、そこから「自動書き換え」を選ぶと複数の案が並びます。かたい社内文書をやわらかい案内文に変える、冗長な段落を半分の長さに削る、といった調整が数秒で終わります。自分の文章を残しつつ、表現だけ磨けるのが強みです。議事録をそのまま報告書の体裁に整えたいときは、議事録をWordに清書する自動化の流れも参考になります。
参照ファイルを指定して自社の言葉で書かせる
Copilotの本領は、自分の手元にある資料を土台に書かせたときに出ます。指示欄で内容を書いたあと、半角スラッシュ「/」を入力するとファイル名の候補が表示され、参照したい資料をその場で紐づけられます。指定できるのは最大20件です。
たとえば過去の提案書と価格表を参照させれば、自社の用語や数字を踏まえた提案文が返ってきます。一般論ではなく、自分の会社の文脈に沿った下書きになるわけです。ただしファイルを参照させるには、その資料に組織のSharePointやOneDrive上でアクセスできる権限が要ります。ここはMicrosoftの公式ドキュメントで条件が示されています。ExcelやPower BIのデータを扱いたいときは、ExcelのCopilotでKPIを分析する使い方が近い考え方です。
Copilotの精度を上げる指示の書き方
返ってくる文章の質は、渡す指示でほぼ決まります。コツは3つ。読み手を明記すること、目的を書くこと、トーンや長さを指定することです。「報告書を書いて」ではなく「経営会議向けに、今月の売上が前年割れした理由を3点にしぼって、簡潔な報告書を書いて」と伝える。誰が読むかと、どこまで書くかがはっきりするほど、手直しが減ります。うまくいかないときは、いきなり完成形を求めず、まず箇条書きの骨子を出させ、それを膨らませる形にすると安定します。
Copilotにできること、できないこと
正直に線を引いておきます。Copilotが得意なのは、下書きの生成、要約、書き換え、トーン調整、そして手元の資料を踏まえた文章化です。逆に、参照させていない社外の最新情報を正確に書くこと、事実関係の裏取り、細かな数字の正しさの保証は苦手です。返ってきた文章は必ず自分の目で確認する。これは外せません。Copilotは白紙を埋める相棒であって、最終責任を肩代わりする相手ではないと考えると、ちょうどいい距離感で付き合えます。
使う前に確認したいライセンス条件
WordでCopilotを使うには、対象となるMicrosoft 365のサブスクリプション、またはMicrosoft Copilotのライセンスが必要です。何ができるか、Word内のCopilotチャットが開けるかは、契約しているプランの種類と、組織側の設定によって変わります。会社のパソコンでアイコンが出ないときは、まず自分のライセンスと管理者の設定を確認するのが早道です。この条件はCopilot in Wordの公式ページに記載があります。なお2026年からは、Word内でCopilotが使うAIモデルを選べる仕組みも加わりました。詳しくはCopilotのモデル選択式への変化で触れています。
コピペで使えるプロンプト集
① 取引先向けの謝罪・代替案メールをWordで下書きする
納期遅延やミスの連絡を、丁寧なトーンで取引先に送りたいとき
あなたは丁寧なビジネス文書に長けた事務のプロです。以下の状況で、取引先へ送るお詫びメールの下書きをWordで作成してください。状況:【納品が1週間遅れる】。相手:【長年取引のある法人顧客】。目的:誠実に謝罪しつつ、関係を損なわないこと。含める要素は、冒頭のあいさつ、遅延の事実と簡潔な理由、代替案を2つ、今後の再発防止の一言、結びの4段落構成。トーンは丁寧かつ簡潔に。まず全体の骨子を箇条書きで示し、次に本文を清書する2段階で出力してください。
② 長い資料を5つの要点に要約させる
数十ページの契約書や仕様書を、読む前に全体像だけつかみたいとき
あなたは要点抽出が得意なリサーチャーです。この文書の内容を、意思決定に必要な観点で5つの要点にまとめてください。対象読者は【この分野の予備知識がない管理職】です。各要点は1文で、専門用語には短い補足を添えてください。加えて、特に注意すべきリスクや条件があれば末尾に「確認事項」として2〜3点だけ挙げてください。原文にない情報は足さず、書かれている内容だけを根拠にしてください。出力は要点リストと確認事項の2ブロックに分けてください。
③ 既存の社内文書をトーン調整して書き換える
かたい社内文書を、読みやすい案内文にトーンだけ変えたいとき
あなたは読み手に合わせて文章を整える編集者です。選択した文章を、意味を変えずにトーンだけ調整して書き換えてください。読み手は【社内の非専門部署のメンバー】。目的は、内容を正確に保ちつつ、やわらかく読みやすくすること。指示:一文を短くし、専門用語は平易な言葉に置き換え、命令口調は依頼口調にする。元の情報や数字は絶対に変えないでください。書き換え案を2パターン出し、それぞれどんな場面向きかを一言添えてください。
白紙のWordを前に固まる時間、わたしも身に覚えがあります。書く内容は決まっているのに、最初の一文が出てこないあの感じ。
Copilotのいいところは、完璧な文章を出してくれることじゃなくて、たたき台をすぐ用意してくれることだと思います。ゼロを1にする一番しんどい部分を肩代わりしてくれる。あとは自分の言葉で直せばいい。
まずは今日の議事録あたりから、気軽に頼ってみてください。手が止まる時間が減るだけで、仕事の重さはずいぶん変わります。