月末が近づくと、経理の残業が始まる。Excelシートを何枚も開いて数字を目で追い、仕訳の金額が合わないたびに入力履歴をさかのぼる。レポートは「もう少し見やすく」と差し戻され、また直す。そのまま深夜になる経理担当は少なくない。
Microsoft 365 Copilotはこの流れを変えられる。月次レポートの作成だけでなく、仕訳の確認や異常値の検知にも使える。「AIは他部署の話」と思っていた経理担当こそ、試してほしい使い方がある。
仕訳の確認をCopilotに任せる
月末の一番しんどい作業の一つが、仕訳の目視確認だ。Excelのシートを開いてCopilotに「この列の金額が前月比5%を超えているセルを教えて」と入力するだけで、候補がリストアップされる。数百行のデータでも数秒で終わる。
以前は目で追っていた確認作業が、「AIが出した候補を判断する」作業に変わる。見落としも減り、同じ作業の繰り返しで疲弊する感覚も小さくなる。
レポートの下書きを任せると時間の使い方が変わる
数字が出そろってから、上司や役員向けのレポートを書くのに時間をかけていないだろうか。Copilotにデータを貼り付けて「今月の売上と費用のサマリーを300字でまとめて、前月比の変動理由も一行ずつ添えて」と入力すれば、下書きが出てくる。Copilotで月次レポートを関数なしで完結させる方法もあわせて参考にしてほしい。
「白紙から書く」と「下書きを修正する」では、集中力の消耗が全然違う。会社固有のコンテキストや数字の解釈は自分で加える必要があるが、そこに集中できるようになるだけで仕上がりが早まる。
東京建物が実証した、現場主導で広がる仕組み
不動産・都市開発を手がける東京建物は、Microsoft 365 CopilotとCopilot Studioを全社に展開した。月間のCopilot利用率は平均80%を超え(最高月は90%超)、社員の7割以上が業務効率化を実感している。現場の担当者たちが自らAIエージェントを作り、約500体が社内で稼働するまでになった。
注目すべきは「現場が自分で作る」という点だ。専門チームが作り込んだのではなく、各部門の担当者がCopilot Studioで自分たちの業務に合ったエージェントを構築した。これは経理部門でも同じことができる。自分の月次業務に合ったプロンプトを作り、繰り返し使う。そこから始めれば十分だ。
異常検知を「毎月使い回せる型」にする
月次の異常検知を毎月手作業でやるのは効率が悪い。Copilotに「前月比20%以上変動している費用科目をピックアップして、理由の仮説を一行ずつ添えて」というプロンプトを作っておき、月次作業のたびに使い回せば、毎月の時間が削れる。
最初から完璧なプロンプトを作る必要はない。使いながら少しずつ修正すれば、3回もすれば自分の業務に合った型ができる。その型が翌月以降の時間を削ってくれる。
月次決算の残業が全部なくなるわけではない。ただ、確認・集計・下書きという繰り返しの作業が減れば、判断や分析に使える時間が増える。経理担当にとって本当に価値があるのは、数字を正確に読むことだ。Copilotはその時間を増やすための道具として使える。
コピペで使えるプロンプト集
① 月次決算レポートを経営層向けに下書きする
月末に役員・上司向けの月次サマリーレポートを作成するとき
あなたは経理担当のアシスタントです。以下の今月の売上・費用データを読み込み、経営層向けの月次サマリーレポートを作成してください。 【今月のデータ】 (売上合計・費用合計・前月比・前年比などの数値をここに貼り付ける) 条件: ・専門用語は最小限にする ・前月比・前年比の変動理由を各項目1〜2行で添える ・全体を400字以内にまとめる ・特に注意が必要な項目があれば冒頭に記載する 出力形式:見出し「今月のサマリー」に続けて文章形式で出力する。箇条書き不可。
② 費用科目の異常値を自動でピックアップする
月末の仕訳確認・金額チェック作業
あなたは経理チェックの専門家です。以下の費用科目ごとの金額データを分析し、異常値の候補をピックアップしてください。 【費用科目データ】 (費用科目名・当月金額・前月金額の一覧をここに貼り付ける) チェック基準: ・前月比で±【20】%を超えているもの ・ゼロから大きな金額に変わったもの(またはその逆) ・通常と異なる科目への計上が疑われるもの 出力形式:「科目名 / 当月額 / 前月額 / 変動率 / コメント1行」の形式でリストアップし、最後に特に注意が必要な上位3件をまとめること。
③ 費用変動の原因仮説を3パターン出す
前月比・前年比の変動を上司に説明するとき
あなたは経理担当の業務サポーターです。以下の費用増減データを見て、変動の原因仮説を立ててください。 【費用増減データ】 科目名:【例:交際費】 当月金額:【例:85万円】 前月金額:【例:55万円】 前年同月:【例:62万円】 仮説を立てる際のポイント: ・季節要因・行事要因(決算期・年度末・繁忙期など) ・一時的な費用か、継続的な費用か ・他の科目との関連性 出力形式:仮説①〜③を箇条書きで。各仮説に「確認推奨アクション(1行)」を添えること。
月末の経理残業、本当につらいですよね。数字が合わなくて焦る夜が何度もあったという方にこそ読んでほしい記事でした。
「プロンプトを型にして使い回す」というのが今回の一番の気づきで、一度作ってしまうと毎月少しずつ楽になっていくのがポイントです。
まず異常検知のプロンプトを一つ試してみてください。来月の月次作業が少しだけ軽くなるはずです。