「うちの会社にもAI使えるようにしてよ」と上司から言われた日から、情シス担当の試練が始まります。何のツールを選べばいいか、セキュリティをどう整備するか、そもそも社員に使ってもらえるのか——何から手をつければいいかわからないまま、気がつけば1ヶ月が過ぎていた、というのが一番多いパターンです。3ヶ月でゼロから形にするには、順番が大事です。
ツール選びより先に業務の棚卸しをする
1ヶ月目にやるべきことは、ツール選定ではありません。まず各部門の担当者を5〜10人ピックアップして、「今どんな作業に一番時間がかかっているか」をヒアリングするところから始めます。AIが得意なのは、定型文の作成、要約、翻訳、繰り返しのデータ整理です。社内の問い合わせ対応や各種申請フローなど、AIエージェントで自動化できる業務は想定より広い範囲に及びます。
この区別を理解しないままツールを先に選ぶと、「便利そうだけど自分の仕事には合わない」という声が各部門で出てきます。ヒアリングに1〜2週間かけることは、後の展開を考えると惜しくない時間の使い方です。
セキュリティポリシーは「禁止リスト」より「許可リスト」で整える
展開前に整備しておくべきが、AI使用ガイドラインです。現場から必ず来る質問が「顧客データをAIに入れていいの?」「社外秘の資料は?」というものです。ここに答えられない状態で展開を始めると、現場が自己判断で使い始めるか、誰も使わなくなるかのどちらかです。
コツは、禁止事項を並べた長い規約を作るのではなく、「これはOK」という許可リストを先に用意することです。「公開情報の要約・整理はOK」「個人情報・顧客データはNG」「社外秘資料の要約はNG」——これを1枚にまとめると、現場が自分で判断できるようになります。シンプルな許可リストの方が、長い規約より実際に機能します。
全社展開より先に「先行チーム」で成功事例を作る
3ヶ月目の目標は「全社展開」ではなく「成功事例を1件作ること」に絞ります。最初から全員に展開しようとすると、サポートが追いつかず、うまく使えない人が増えて「やっぱりAIって難しい」という空気が社内に広がります。
やるべきことは、先行チームを3〜5人に絞って集中的にサポートすることです。「週次レポートが30分から5分になった」「営業提案のたたき台が自動で出てくるようになった」という成果が一つでも出れば、口コミで広がります。情シスが旗を振るより、現場が自ら広げる方が定着率は格段に上がります。
3ヶ月後に「社内でAIが使われている組織」は、最初から全社展開した組織ではありません。棚卸し・ガイドライン・先行チームという3ステップを踏んで、小さな成功体験を積み上げた組織です。情シス担当の仕事は、環境を整えることと、使い始めた人を孤立させないこと。それだけで十分です。
突然「AI推進担当ね」と言われる感覚、なかなかハードですよね。
でもこの3ステップ、実は「人と話す・決める・サポートする」という情シスがもともと得意なことそのものなんです。
最初の1人を動かすところから始めてみてください。そこからは、意外と勝手に広がっていきます。