KYCのための企業調査に丸半日かける——投資銀行やM&Aチームなら、こういう経験は珍しくないはずです。登記情報、財務諸表、過去数年の報道履歴、役員の変遷。調べる項目は毎回ほぼ同じなのに、1件ごとに手作業で情報を集めてフォーマットに落とし込んでいく。シニアが確認して差し戻しがあればやり直す。付加価値を生んでいる感覚が薄い作業が、週の大半を占める状態です。案件数が増えるほど、このロスは無視できなくなります。
PerplexityとClaudeで企業調査の叩き台を作る
Perplexityは最新の外部情報収集に強く、Claudeは大量テキストの読み込みと構造化が得意です。この2つを組み合わせると、KYC調査の初期フェーズを大幅に効率化できます。
まずPerplexityで「〇〇社の直近3年の主要ニュース・訴訟・役員変更を要約して」と検索します。次にClaudeにIRレポートや開示資料をペーストして「KYCチェックリストに沿って財務サマリーと事業概要を整理して」と指示する。この2ステップで調査の叩き台ができあがります。精査と最終判断は人間が行いますが、「叩き台を作る時間」がなくなるだけで体感の負荷は大きく変わります。案件が重なる時期には、この差が週単位の工数削減につながります。
ピッチブックは構成要素に分解してClaudeに渡す
ピッチブックをClaudeに一気に書かせようとすると、たいていうまくいきません。出力が汎用的になりすぎて使えるパーツが少ない。成功するアプローチは逆で、まず構成要素を分解して個別に渡すことです。
市場概況、競合マップ、財務サマリー、バリュエーション前提——4つをそれぞれ独立したタスクとして渡すと、出力の精度が格段に上がります。「この業界の主要プレイヤー5社の事業概要と売上規模を比較表にして」「このEBITDAデータからマルチプルのレンジを計算して」のように具体的な問いに絞る。最終的なデザインとストーリーの組み立ては人間がやります。Claudeが担うのは「素材を揃える作業」です。
タスク別エージェントでチームの品質を標準化する
Claudeを業務に本格的に組み込んでいるチームは、タスク別にエージェントを設計しています。企業調査用、財務モデルレビュー用、契約ドラフト用、議事録整理用——それぞれに専用のシステムプロンプトと入力フォーマットを決めておく。JPMorgan ChaseがLLMエージェントで資料作成を数時間から30秒に短縮した背景には、まさにこの設計があります。
こうすると、経験年数に関わらずチームメンバー全員が同じ品質の出力を得られます。ベテランアナリストのノウハウをプロンプトに落とし込む、というイメージです。整備に手間はかかりますが、一度作れば繰り返し使えます。
KYCやピッチブックに限らず、デューデリジェンスやPMI計画の作成にも同じ枠組みが使えます。業務の「繰り返し構造」を見つけたところにClaudeを差し込む。それがM&Aチームでの活用の基本的な考え方です。
コピペで使えるプロンプト集
① KYC初期調査の外部情報を収集する
投資先候補の企業調査・外部リサーチ
あなたはM&Aアナリストです。投資先候補の企業について、KYC調査の初期情報収集を行います。 調査対象:【企業名(例:〇〇株式会社)】 確認期間:直近【3〜5年】 以下の観点で検索・調査してください: ・直近の主要ニュース(業績発表・提携・訴訟・不祥事) ・役員の変更・退任情報 ・株主変動・M&A関連の動き ・規制当局との関係・行政処分履歴 各項目の情報源(ニュース名・日付)も合わせて記載してください。このレポートはClaudeに渡して財務サマリーと合わせて整理します。
② ピッチブック用の競合比較表を作成する
ピッチブック制作の競合分析フェーズ
あなたはIBDアナリストです。ピッチブック向けの競合比較表を作成してください。 対象業界:【業界名(例:SaaS / 医療機器 / 物流)】 比較対象:【企業A / 企業B / 企業C / 企業D / 企業E】 比較軸:売上規模・成長率・EBITDAマージン・主力事業・地域展開・M&A実績 各社について以下の形式でまとめてください: ・事業概要(2〜3行) ・直近3期の財務ハイライト ・強み・弱みの評価(各2点以内) 最後に【クライアント企業名】との差異化ポイントを3点挙げてください。表形式とテキストを組み合わせてまとめてください。
③ デューデリジェンス資料の要点を整理する
DDフェーズでの資料確認・レポート作成
あなたはM&Aアナリストです。以下の資料をDD(デューデリジェンス)の観点から要点を整理してください。 対象資料:【資料をここに貼り付け】 DD対象企業:【企業名】 確認観点:【財務 / 法務 / 人事・組織 / IT / 事業】(複数選択可) 出力形式: 1. 重要ポイント(3〜5項目) 2. リスク項目と深刻度(高・中・低) 3. 追加確認が必要な事項 4. 次のアクション提案 チーム共有レポートとして使えるよう、専門用語を使いつつ簡潔にまとめてください。
KYCの企業調査って、毎回同じ内容なのに毎回手作業……その積み重ねが体力を奪いますよね。
PerplexityとClaudeの2ステップを覚えるだけで、叩き台コストがほぼゼロになります。エージェント化するとチームの品質まで揃うのは、正直すごい変化です。
まず1件、KYC調査で試してみてください。「なんで今まで手でやっていたんだ」ってなりますよ。