発注書を手で打ち込んでいる間に、価格交渉の準備が後回しになる。3社から届いた見積書を比較するだけで午前中が終わってしまう。調達・購買部門の「日常」は、繰り返しの入力作業と確認の連続です。
イオンリテールが発注作業を半分にした理由
イオンリテールは日本IBMと共同開発した需要予測AI「AIオーダー」を約380店舗に展開し、発注時間を50%削減、在庫金額を平均30%削減しました。気温・曜日・プロモーション実績を組み合わせて最適発注数を自動計算し、担当者が判断するのは「その数字を承認するかどうか」だけです。作業を「減らす」のではなく、構造ごと変えた事例です。
同規模のシステムは必要ありません。ChatGPTやClaudeのファイル読み込み機能を組み合わせれば、今日から似たような運用を作れます。
見積書の比較表が30分から5分になる
取引先から届いたPDFの見積書を、ChatGPTのファイル添付機能に投げてみてください。「この見積書から品番・単価・数量・納期を表形式で出力して」と伝えれば、手入力が不要になります。3社の見積書をまとめてアップロードして「最安値と納期の優位性を比較して」と続けると、比較表の作成が30分から5分に短縮されます。見積書ごとに書式が違っていても、AIがそろえてくれます。
見積比較の自動化についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。
交渉準備こそ、AIが時間を返してくれる仕事
価格交渉の前日に行う競合調査。これまで4時間かけていた作業が、Claudeに「【取引先名】と同カテゴリの競合サプライヤーの価格帯と当社の現行単価の差異を分析し、交渉で使える論点を3つ挙げて」と入力するだけで30分に変わります。自社の過去発注データや契約条件をあわせて貼り付ければ、論点の具体性がさらに上がります。
発注書の起票も変わります。「前回の発注書テンプレートを参考に、今回は品番〇〇を100個、単価〇〇円で発注書を作成して」と指示すれば、書式を整えた下書きが1分で出ます。残りの時間を、内容の確認と承認フローに使えます。
AIに渡すと精度が上がる「3点セット」
調達業務でAIをうまく使えない人の多くは、指示が曖昧です。「調べて」では動きません。必要なのは3つ——①現在の取引条件(単価・発注頻度・支払いサイト)、②比較対象のデータ(複数社の見積書・過去実績)、③アウトプットの形式(比較表・箇条書き・メール文)。この3つをセットで渡す習慣をつけるだけで、回答の精度が大きく変わります。
戦略的なサプライヤー選定や関係強化に時間を使えるかどうかは、定型作業をAIに渡せているかどうかで決まります。渡せる仕事から、一つずつ始めてみてください。
コピペで使えるプロンプト集
① 複数社の見積書を比較して選定するプロンプト
購買担当が複数サプライヤーの見積書を比較検討するとき
あなたは【製造業・商社など】の購買担当者です。 以下の目的で、複数社の見積書を比較してください。 ・目的:【品名】の発注先を選定する ・比較対象:添付した【〇社分】の見積書PDF 以下の項目を表形式で整理してください。 ・品番・品名 ・単価 ・最小発注数量 ・納期 ・支払い条件 ・特記事項(値引き条件・保証内容など) 整理後、最安値・納期・総合評価の観点で推奨サプライヤーを1社選び、その理由を3行以内で説明してください。
② 発注書のドラフトを1分で作成するプロンプト
取引先への発注書を素早く起票したいとき
あなたは【製造業】の購買担当者です。 以下の情報をもとに発注書のドラフトを作成してください。 ・発注先:【会社名】 ・品番:【品番】 ・品名:【品名】 ・数量:【〇個】 ・単価:【〇〇円(税抜)】 ・希望納期:【〇月〇日】 ・納品先:【住所または拠点名】 ・支払い条件:【月末締め翌月末払いなど】 出力形式: 発注書の本文テキスト(宛名・件名・品目表・備考欄を含む) 送付メールの件名と本文もあわせて出力してください。
③ 交渉前の論点を30分で整理するプロンプト
取引先との価格交渉前日に準備したいとき
あなたは【製造業の購買部門のリーダー】です。 明日、【サプライヤー名】との価格交渉があります。以下の情報をもとに交渉準備をしてください。 ・現行単価:【〇〇円/個】 ・発注頻度:【月〇回・年間〇〇個】 ・取引開始時期:【〇年〇月】 ・目標単価:【〇〇円以下】 以下を出力してください。 1. 交渉で使える論点3つ(価格・数量・支払い条件など) 2. 相手が反論してくる可能性のある主張と、その切り返し方 3. 交渉の優先順位(譲れない点・交渉余地がある点) 4. 冒頭の切り出しトーク例(100文字以内)
発注書の入力って地味で、でもミスが許されない仕事ですよね。
イオンリテールの「承認するだけでいい」に変えた話、構造ごと変えるという発想が刺さりました。大きなシステムじゃなくても、ChatGPTに見積書を投げるところから同じ発想で始められます。
小さなプロンプトから試してみると、意外と早く「これは任せられる」という感覚が来ますよ。