商品企画の提案書、何週間前から準備を始めますか。消費者ヒアリング、競合調査、トレンドの収集——これを担当者1人でまとめようとすると、会議の日程より調査期間の確保が先になる。結果として「今回は時間がなかったので」が暗黙の前置きになる。
花王はこの状況を変えた。NTTデータが提供する「LITRON® Marketing」という生成AIプラットフォームを導入し、それまで1.5カ月かかっていた消費者調査を0.5日で完了できる体制を整えた。削減率は99%で、調査の洞察品質は従来と同等だと社内で確認済みだという。
専用AIサービスを導入できる企業はまだ限られる。ただ、今すぐChatGPTやGeminiで同じ発想を取り入れることはできる。
AIが代わりにやれる「調査フェーズ」の範囲
コンセプト立案の前段階にある作業を整理すると、収集・整理・仮説立案・概念化の4段階になる。このうちAIが得意なのは最初の3段階までだ。
「この製品カテゴリで消費者が感じている不満を10個挙げてください」とChatGPTに依頼すると、SNSや口コミから抽出したような視点がすぐ返ってくる。競合製品の特徴を比較させること、ターゲット層のペルソナを複数作らせること、いずれもひとつのプロンプトで動く。担当者が3週間かけてやっていた作業が、30分に変わる。
花王の「0.5日調査」を自社に応用する3ステップ
AIで消費者調査を動かすには、指示の構造が重要になる。実践的な手順は3段階だ。
まず、調査する製品カテゴリとターゲット層を明確にしてAIに渡す。「30代女性向けスキンケアの、価格帯1,000〜3,000円の市場」のように条件を絞るほど出力精度が上がる。次に、出てきたインサイトを「このニーズの中でまだ解決されていないものはどれか」という問いでさらに絞り込む。AIは網羅性で出してくるので、この絞り込みステップが精度の肝になる。最後に、絞り込んだニーズから3〜5本のコンセプト案を出させ、自社の強みと重なるものを選ぶ。
日清食品が経営企画にChatGPTを導入した事例でも「骨格だけAIに出させる」が基本方針だった。たたき台の生成はAIに任せ、磨きは人がかける——この分業が業種を問わず定着しつつある。
チームに出せる品質にする最後の確認
AIのコンセプト案はそのままでは会議に出せない。言葉が抽象的だったり、自社の製造能力と合っていなかったりする。ここは人の目が必要な部分だ。
チェックポイントは3つ。自社が技術的に実現できるか。競合との差がひとことで説明できるか。ターゲット層が「自分のための商品だ」と感じられるか。この3点を担当者が確認して言葉を整えれば、会議に出せる品質になる。AIが骨格を作り、人が磨く。この分業が今日から使える形になっている。
コピペで使えるプロンプト集
① 消費者インサイトをAIで10個抽出するプロンプト
新商品の企画会議前に消費者ニーズを素早く把握したいとき
あなたは【ブランド名(例:〇〇スキンケア)】担当のマーケターです。【製品カテゴリ(例:30代女性向けスキンケア、価格帯1,000〜3,000円)】の市場を調査しています。この製品カテゴリで消費者が感じている不満・不便・不足を10個挙げてください。各インサイトに対して、既存の競合製品がどの程度解決できているかを「高・中・低」で評価してください。出力形式:番号付きリスト。各項目に「インサイト」と「既存解決度」を含めること。
② 未解決ニーズからコンセプト案を5本生成するプロンプト
絞り込んだ消費者ニーズから複数のコンセプト案を素早く作りたいとき
あなたは【ブランド名】の商品企画担当です。以下の消費者ニーズ(既存解決度:低)を解決する新商品コンセプト案を5本作成してください。対象ニーズ:【前のプロンプトで抽出したニーズを貼り付け】。各案に①コンセプト名②ターゲット③価値提案(2文以内)④競合との差別化ポイントを含めてください。価格帯は【例:1,500〜2,500円】を想定してください。
③ コンセプト案を4軸でスコアリングするプロンプト
複数のコンセプト案の中から会議で提案する最適案を選びたいとき
以下のコンセプト案について4軸で評価してください。評価軸:①市場ニーズとの適合度②自社強みとの整合性③競合との差別化明確度④ターゲット共感度。各軸10点満点でスコアリングし、合計点と推奨理由(3文以内)を提示してください。評価対象:【コンセプト案1〜5をここに貼り付け】。スコアが同点の場合は「自社製造実現可能性」を判断基準にして推奨案を1本選んでください。
調査期間がかかって提案タイミングを逃す、マーケターにとってつらい「あるある」ですよね。
花王の事例で驚くのは、品質が落ちなかった点です。時短だけでなく精度も担保できるなら、使わない理由が見当たらない。
まずプロンプトひとつ試してみてください。30分後には考え方が変わっているはずです。