「明日の午前中までに確認お願いします」という依頼が3件たまっている。それぞれ20〜30ページある契約書で、リスク箇所を洗い出して修正案も用意する。特別な案件でもなく、これが法務担当の普通の1日だ。ChatGPTやClaudeを使うと、この作業が根本から変わる。
リスク箇所の抽出は「AIへの貼り付け」から始まる
契約書のテキストをコピーしてChatGPTに貼り付け、「この契約書の法的リスクになりうる条項を抽出してください。特に、損害賠償の上限・解除条件・知的財産権の帰属について重点的に確認してください」と伝える。これだけで、赤線を引いていた作業の大半がAIに移る。
出力は条項番号と問題点がセットで返ってくる。「第13条(損害賠償):上限設定がなく、弊社側のリスクが大きい」のような形式で整理されるので、次に何をすべきか判断しやすい。ポイントは、確認したい観点を具体的に書くこと。「チェックして」だけでは結果が曖昧になる。
修正案もAIに草案を作ってもらう
リスク箇所が出たら、そのまま「この条項について、発注者側に有利な修正案を2パターン出してください」と続ける。Claudeは法的文書のトーンを維持したまま修正文を書くのが得意で、実際に使えるレベルの案が返ってくることが多い。最終確認は自分でやるとしても、修正文を1から考える時間がほぼゼロになる。
エナジーウィズ株式会社(鉛蓄電池製造)では、知的財産部門でexaBase生成AI(エクサウィザーズ製)を導入し、特許・契約文書の確認業務を含む作業で月間120時間/人の業務削減を実現した。全社100ユーザーで見ると月間1,600時間の削減になる。法務・知財系の文書作業にAIが入ることで、時間の使い方が大きく変わる。
社外に出せない文書の扱いは事前に確認する
契約書は機密情報を含むケースが多く、外部のAIサービスにそのまま貼り付けることについて社内ルールが必要なことがある。Claude.aiやChatGPTの場合、エンタープライズプランであれば会話内容が学習に使われない設定にできる。まず自社のAI利用ポリシーを確認してから始めるのが順番だ。社内に閉じた環境でのAI活用については、外に出せないデータを、AIで使いこなす方法でまとめている。
「判断」だけ自分でやる
AIが得意なのは「条文の読み取りと整理」「修正文の草案作成」「類似事例の整理」だ。法律の解釈や契約交渉における判断は人間の仕事として残る。全部AIにやらせるのではなく、下書きと骨格をAIに任せて、判断だけ自分でやるという役割分担が現実的だ。
1件30ページの契約書を1から読んでリスクを洗い出す作業が、AIを使うことで確認と判断の作業に変わる。法務担当の負荷が高い理由の多くは、同じ構造の文書を毎回1から読むことにあった。AIはその繰り返しを引き受けられる。
コピペで使えるプロンプト集
① 契約書のリスク条項を自動抽出するプロンプト
契約書の初回リスク確認作業
あなたは法務の専門家です。以下の契約書テキストを読み、法的リスクになりうる条項を洗い出してください。特に①損害賠償の上限・範囲、②契約解除条件、③知的財産権の帰属・ライセンス条件、④秘密保持の範囲と例外、の4点を重点的に確認してください。各リスク箇所は「条項番号:問題点:推奨対応」の形式でまとめてください。【契約書本文】 (ここに契約書テキストを貼り付ける)
② 不利な条項の修正案を2パターン作るプロンプト
契約交渉の準備・修正案の起案
以下の契約条項について、弊社(受注者/発注者)側に有利な修正案を2パターン提案してください。パターンAは「強い修正案」(理想に近いが相手が難色を示す可能性がある案)、パターンBは「現実的な妥協案」(双方が受け入れやすい落としどころ)として作成してください。修正後の条文テキストも含めてください。【対象条項】(条項番号と現行テキストを貼り付ける)【修正の目的】例:損害賠償上限を設定したい / 解除条件を緩和したい
③ 法務知識がない社内向け契約サマリーを作るプロンプト
営業担当・上長への契約内容の共有
以下の契約書を、法務知識がない【営業担当/経営者】向けにわかりやすくまとめてください。出力形式:①この契約で何ができるか(権利)、②何をしてはいけないか(禁止事項)、③契約を解除できる条件、④万が一の損害賠償の範囲、⑤要注意ポイント(最大3項目)。専門用語は避け、平易な言葉で書いてください。【契約書本文】 (ここに契約書テキストを貼り付ける)
契約書の確認って、「大変だった」と言いにくい仕事ですよね。地味に時間を食うのに。
AIに任せると、読む作業より判断する作業に集中できるようになります。プロとして本来やるべきことに時間をかけられるのが、一番の変化だと思います。
試しに1件、ChatGPTに貼り付けてみてください。