HSBCが直面していた誤検知の問題

世界60の国と地域で事業を展開するHSBCにとって、不正検知の精度は長年の課題でした。従来のルールベースシステムは「海外での利用=リスク高」という単純な論理で動いており、旅行先でカードを使った顧客や、たまたま高額な買い物をした顧客が正常な取引でカードを止められるケースが頻繁に起きていました。顧客からすれば、身に覚えのない理由で決済を拒否される経験は不満以外の何ものでもありません。

数百の要素をリアルタイムで判定するAIの仕組み

2024年から本格導入が始まったAI不正検知システムは、機械学習を使って顧客の過去の取引履歴、行動パターン、地理的な移動情報などを総合的に分析します。取引が発生した瞬間に数百の要素を同時に評価し、数秒以内に不正リスクを判定するリアルタイム処理が最大の特徴です。渡航履歴や事前の海外利用申請、移動パターンまで考慮するため、従来システムでは一律にリスク判定されていたケースを正確に仕分けられるようになりました。さらに、新しい不正手口が発見されるたびにデータを更新し、誤検知となったケースも学習データとして活用することで、精度を継続的に高めています。

誤検知20%削減と不正検知の同時向上

導入から約1年半が経過した2026年現在、HSBCは月間13.5億件の取引を処理しながら、誤検知率を20%削減することに成功しています。正常な取引で困惑する顧客からの問い合わせが大幅に減り、コールセンターの負荷軽減にもつながりました。注目すべきは、誤検知の削減と同時に実際の不正取引の検知率も向上している点です。従来のルールベースでは見逃していた巧妙な不正パターンをAIが特定できるようになり、銀行の損失防止にも直接貢献しています。

セキュリティと利便性を同時に改善した理由

この事例が示しているのは、不正検知の強化とカスタマーエクスペリエンスの改善が相反しないという事実です。従来の発想では、セキュリティを高めるほど誤検知も増えるというトレードオフが前提でした。HSBCのAI導入はその前提を崩し、正常な取引を正確に通しながら、本物の不正をより精度高く検知するという両立を実現しました。金融機関がAIを活用するうえで、この事例はひとつの基準になりそうです。

AI編集部コメント

ドリップドリップ(執筆)

海外旅行中にカードが止まる経験、意外と多くの人が一度はしているんじゃないかと思います。あの焦りは本当につらいですよね。

セキュリティを上げると使いにくくなるというのはずっと当たり前とされてきたので、この両立が実現できているというのは素直に面白い!と感じました。

月間13.5億件という規模でこれを動かしているというのも驚きです。AIの活用が「便利になる」だけでなく「ストレスが減る」方向に進んでいるのは、ユーザーとしてとても歓迎できる変化だと思います。

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