木曜の午後3時。サポートメールの受信箱に12件の未処理がある。担当者は別の案件の対応中で、いつ見てもらえるかわからない。Salesforceは開いているのに、それを活かして動けるのは人間だけという状況が続いている。
2026年9月11日、SalesforceはAgentforce 360の一部として職種別に動く7つのAIエージェントを発表した。Salesforce公式の発表によると、いずれも特定の職種・業務に即日対応できる状態で提供される。営業・CS担当者に直接関係するのは、カスタマーサービスを担う「Casey」と、インバウンド営業を担う「Piper」の2つだ。
CaseyはCSの一次対応、PiperはSDRの代わりになる
Caseyがカバーするのは、電話・SMS・WhatsApp・Webチャット経由の顧客問い合わせ。FAQへの回答、返品・交換対応、アカウント管理、担当者への引き継ぎまでを自律処理する。同社のHelp Agentはすでに400万件超の問い合わせを処理しており、解決率は約70%に達している。CS担当者が毎日こなしていた定型対応の大半を代替できる水準だ。
Piperが担うのはインバウンドの商談化。見込み客がWebサイトにアクセスした瞬間に応答し、B2Bのリードを担当営業に引き渡す前の初期スクリーニングを行う。営業が気づく前に、すでに温度感の高い会話が進んでいる状態を作れる。アウトバウンドのHunterとは異なり、Piperは来た客を逃さないための仕組みだ。
CSチームへのAIエージェント導入のプロセスを先に整理しておきたい場合は、CSチームにAIエージェントを入れるなら、まずこれをやるも参考になる。
パナソニック アジア パシフィックが先行した事例
日本企業の先行事例として、パナソニック アジア パシフィックがある。2025年にフィリピンでSalesforce Agentforceの運用を開始し、2026年5月にはベトナム・カンボジア・タイへ展開を拡大した。RAGを活用して製品マニュアルやトラブルシュートの内容をエージェントに組み込み、顧客の日常的な問い合わせを24時間自律対応する体制を構築した。CS担当者はその分、複雑なケースや高付加価値な業務に集中できるようになったという。
CaseyもRAGによるナレッジ活用を前提とした設計になっている。既存のSalesforceナレッジ記事の質が、エージェントの回答精度に直接影響する。整備されていないナレッジのまま動かしても、効果は出ない。
Salesforceユーザーが今週から始める3ステップ
まず、Salesforceナレッジ記事の棚卸しをする。ナレッジが未整理のままだとエージェントの回答がぼやける。優先度の高いFAQ上位20件を整えるだけで、Caseyの精度は大きく変わる。週次レポートより先に着手する価値がある。
次に、Caseyに任せるシナリオを3つ絞る。「注文ステータスの確認」「返品・交換の受付」「FAQ対象外の引き継ぎ」など、定型化しやすいものから入ると、エージェントの精度を測りやすい。いきなり全件委任せず、1週間のパイロットで解決率を計測することが重要だ。
最後に、Piperのリード受付条件を定義する。「会社規模50名以上」「業種が製造業または小売業」といったスクリーニング条件を事前に設定することで、担当営業に渡すリードの質をコントロールできる。条件なしで動かすと、精度の低い商談候補が大量に流れてきて担当者の負担が増える。
コピペで使えるプロンプト集
① Caseyに任せるCS対応シナリオを設計するプロンプト
Salesforce Casey導入前のシナリオ定義
あなたは【業種:例「家電メーカー」】のカスタマーサービス責任者です。以下の状況を前提に、AIエージェントに任せるCS対応シナリオを3つ提案してください。 【現状】:月間問い合わせ件数【例:500件】、うち担当者が対応【例:350件】、回答に平均【例:8分】かかっている 【Salesforceナレッジ記事数】:【例:45件】 【優先したい効果】:【例「一次対応の自動化」「担当者の残業削減」】 各シナリオについて:対応パターンの説明・想定解決率・ナレッジ整備の優先度を明記してください。
② SalesforceナレッジをCasey用に整備するためのチェックプロンプト
Salesforceナレッジ記事の品質改善
以下のSalesforceナレッジ記事をAIエージェント(Casey)が顧客対応に使えるかチェックし、改善点を指摘してください。 【ナレッジ記事のタイトル】:【例「返品・交換ポリシーについて」】 【本文】:【ここにナレッジ記事の本文を貼る】 チェック観点:①質問の多様なパターンに対応できるか②回答が一意に定まるか③引き継ぎ条件(人間担当者に渡すべきケース)が明確か 改善案は元の文体を維持して修正案として出力してください。
③ PiperのインバウンドリードスクリーニングをSalesforceに設定するプロンプト
Piper(インバウンド営業エージェント)の条件定義
あなたは【業種:例「SaaS営業マネージャー」】です。Salesforceのインバウンド営業エージェント(Piper)に設定するリードスクリーニング条件を定義してください。 【ターゲット顧客像】:【例「従業員50名以上の製造業、IT投資に積極的」】 【現在のインバウンドリード数/月】:【例:120件】 【担当営業が対応できるリード数/月】:【例:30件】 出力形式:①Piperが商談候補と判定する条件(5項目以内)②担当営業に引き渡すメッセージの例文③除外すべきリードの条件(3項目以内)
「エージェントに任せる」と言うと大げさに聞こえるけど、ナレッジ20件を整えて3シナリオを定義するだけなら、今週末で終わる作業量ですよね。
CaseyとPiperの面白いところは、「担当者の仕事をなくす」のではなく「担当者が本来集中すべき仕事に戻せる」設計になっているところだと思います。定型対応に追われていた時間が、複雑な顧客対応や商談のクロージングに使えるようになる。
まず1週間、パイロットで動かしてみてください。数字が出ると、次の一手が見えてきます。