プロジェクトマネジャーが一週間に何時間を「書く仕事」に費やしているか、振り返ってみると驚く数字になることが多い。要件定義書の読み込みと整理、議事録からのリスク洗い出し、ステークホルダーへの進捗報告。技術的な判断や意思決定より、文書をまとめる作業に追われている日が週に何度もある。
ClaudeやChatGPTは、このどれにも対応できる。ただし「うまく動くインプットの渡し方」は業務によって少し異なる。
要件定義書を10分で整理する渡し方
ユーザーから届いた仕様メモ、ヒアリング議事録、チャット上のやり取りを、まとめてClaudeに貼り付ける。「機能要件・非機能要件・未確認事項の3つに分類して箇条書きで整理してください」と指示するだけで叩き台が10分以内に出来上がる。
特に効果があるのが「未確認事項」を必ず洗い出させる点だ。経験豊富なPMでも抜け漏れが出やすいこの部分を、AIは律儀にリストアップする傾向がある。プロジェクト初期のキックオフ前に使えば、後工程での手戻りを事前に防げる。
社内に既存の要件定義フォーマットがあれば、サンプルを1件だけ貼り付けるのが効果的だ。Claudeは文体と構成を読み取って同じ形に揃えてくれるので、独自テンプレートとの相性が特にいい。
リスクを先に炙り出す使い方
仕様書や議事録のテキストをそのまま貼り付けて、「潜在的なリスクと懸念事項を影響度(高・中・低)で分類してリストアップしてください」と指示する。担当者の視点では見えにくい課題を、AIが第三者的な目線で引っ張り出してくることが多い。
注意したいのは、AIが出すリスクはあくまで「気づきのリスト」に過ぎないことだ。プロジェクト固有の背景や、チームの力量・人間関係はAIには読めない。取捨選択は最終的にPMが行うが、ゼロからブレインストーミングするより格段に速い。
ダイキン工業は社内生成AIプラットフォーム「D-Wind」(ChatGPT基盤)を2026年3月末時点でグループ全体1万人超に展開し、翻訳・要約業務の時間を平均30分から約3分に短縮している。文書を読み込んで要点を抽出するというアプローチは、PMのリスク抽出業務でも同じように応用できる。
進捗報告を15分で仕上げる型
進捗報告に時間がかかる主な理由は、「何を・どの粒度で・誰向けに書くか」という判断がその都度発生することだ。この判断をAIに任せるより、型として固定してしまうほうが早い。
「今週の進捗・課題・来週の予定・ステークホルダーへの依頼事項」の4項目を固定フォーマットにする。タスク管理ツールから書き出したメモや週次の会議メモをChatGPTやClaudeに貼り付け、「このフォーマットで進捗報告の叩き台を作成してください」と指示すれば、15分以内に仕上がる。
報告相手に合わせて「リスクを冒頭に書く」「専門用語を避けて平易にする」などの指示を一文追加すると、そのまま使える精度になる。こうした使い方をチーム全体に広げようとするとき、メンバー間のAI活用格差が新たな課題になることがある。
コピペで使えるプロンプト集
① 議事録・仕様メモから要件を整理する
キックオフ前の要件定義書まとめ
あなたは経験豊富なプロジェクトマネジャーです。以下の情報(議事録・仕様メモ・チャットログなど)を読み込み、プロジェクトの要件を整理してください。 【入力テキスト】 (議事録・仕様メモ・チャットログ等を貼り付ける) 以下の形式で出力してください: ■ 機能要件(確定済み) ・【例:ログイン機能、検索機能など】 ■ 非機能要件(パフォーマンス・セキュリティ等) ・【例:レスポンス1秒以内、個人情報の暗号化など】 ■ 未確認事項(要確認・要決定) ・【例:対応OS、ユーザー数上限など】 特に「未確認事項」は漏れなく抽出することを優先してください。
② 仕様書・議事録からリスクを洗い出す
プロジェクトリスク管理・リスクアセスメント
あなたはプロジェクトリスク管理の専門家です。以下のプロジェクト情報(仕様書・議事録・要件定義等)を読み込み、潜在的なリスクと懸念事項を洗い出してください。 【プロジェクト情報】 (仕様書・議事録等を貼り付ける) 以下の形式で出力してください: ■ 影響度:高(プロジェクト全体に影響しうるリスク) ■ 影響度:中(部分的な遅延・品質低下のリスク) ■ 影響度:低(軽微な懸念事項) 各リスクには「リスク内容」と「想定される影響」を1〜2文で記述してください。担当者が見落としやすい外部要因・技術的課題・スケジュールリスクも含めて抽出してください。
③ 週次進捗報告を自動作成する
ステークホルダーへの週次進捗報告
あなたは【職種・例:システム開発プロジェクトのPM】のアシスタントです。以下の週次メモ・タスク管理データを基に、ステークホルダー向けの進捗報告書を作成してください。 【今週のメモ・タスクログ】 (タスク管理ツールのエクスポートや週次メモを貼り付ける) 以下のフォーマットで出力してください: ■ 今週の進捗(完了したタスク・達成事項) ■ 現在の課題・リスク(優先度順) ■ 来週の予定(実施予定タスク) ■ ステークホルダーへのお願い(確認・承認・リソース依頼) 専門用語は避け、非技術者にも伝わる平易な表現で書いてください。
「書く仕事が多くて、本来やるべき判断業務に集中できない」という悩み、PMをやっていれば一度は経験しますよね。
要件整理・リスク抽出・進捗報告、この3つだけでも任せられたら、かなり楽になると思います。ダイキン工業の30分→3分という数字、思い切って試す価値があります。
まずは今週の進捗報告から、一度AIに叩き台を作ってもらう実験をしてみてください。