電話を切った直後、手元のメモは走り書きだらけです。先方が言ったこと、全部書き起こせていたか不安になりながら顧客管理ツールを開いて入力し直す。その作業だけで15分が消えていきます。CS担当や営業職にとって、「通話後の入力作業」は地味に時間を削り続ける業務です。

Gemini 3.5 Transcribeが解消する「通話後の入力ロス」

2026年8月にGoogleが公開したGemini 3.5 Transcribeは、音声をテキストに変えるだけでなく、フィラー(えー・あの・そのー)の除去や自動整形まで行うモデルです。従来の音声認識ツールと違い、「Aさんが言ったのはBのことですね、いや違う、Cです」という訂正も正しく処理し、最終的な発言として記録します。85言語以上に対応しており、日本語の精度も高い。Gemini APIのほか、GeminiアプリのWeb版からファイルをアップロードして試せます。

実際の業務フローに組み込むとこうなります。通話を録音したmp3やwavファイル、またはZoom・Teams等の録画ファイルを用意し、GeminiアプリかAPIに投げます。そこにプロンプトを一行添えるだけです。

顧客台帳に落とし込むプロンプトの型

プロンプトはシンプルです。「この音声の内容を、顧客名・会社名・ニーズ・懸念点・次のアクションの形式でまとめてください」と書くだけで、要約と入力フォームの穴埋めが一度に出てきます。社内のCRMが特定のフォーマットを要求していれば、そのフォーマットをそのまま貼り付けてプロンプトにすると精度が上がります。

ポイントは出力形式を指定することです。「JSON形式で」「箇条書き5項目で」「Salesforceの商談メモの形で」と具体的に書くと、そのまま貼り付けられるテキストが返ってきます。30分の商談でも、重要点の要約は2〜3分で完成します。

三井住友トラストTAソリューションが実証した効果

先行事例として注目されるのが、三井住友トラストTAソリューション(証券代行・株主名簿管理)のコンタクトセンターです。同社は音声認識AIとテキスト要約AIをトランスコスモスと共同で導入し、コンタクトセンター全体の年間総労働時間を約9,200時間(全体比約10%)削減しました。投資回収は約2年以内を達成しています。CSの通話業務に音声AIを組み込む場合の規模感として参考になります。

日常業務への取り込み方

自社のCRMがSalesforceやHubSpotであれば、Gemini APIとZapierやMake(旧Integromat)を組み合わせることで、録音ファイルのアップロードから顧客台帳への書き込みまで自動化できます。まず手動で3件試して出力フォーマットが合うと確認できたら、自動化を検討する順番が現実的です。

1件15分の入力作業が週20件あれば、週5時間です。それをほぼゼロにできるとしたら、その時間は商談やフォローコールに使えます。ツールを使いこなすことより、電話後の時間の使い方が変わることの方が大きな変化かもしれません。

電話を切った後の「あの15分」、分かります。走り書きのメモを見ながら入力し直す作業、地味に消耗しますよね。

出力形式を指定するだけで、AIが構造化してくれる。この発想の転換が一番の気づきでした。「まとめて」より「このフォーマットで」の一言が全然違う。

まず1件、試してみてください。手応えを感じたら、自動化の検討を始める価値があります。

コピペで使えるプロンプト集

① 営業電話の内容をCRMフォーマットで出力する

通話録音のテキストをCRMの入力フォームに合わせて整理したいとき

あなたは営業アシスタントです。以下の通話録音テキストを読み、次のフォーマットで情報を整理してください。

【顧客名】
【会社名・部署】
【現在の課題・ニーズ】
【懸念点・反対意見】
【次のアクション(担当者・期日)】
【提案すべき製品・サービス】

確認できなかった項目は「不明」と記載してください。出力は日本語で。

通話録音テキスト:
【ここに通話テキストを貼り付け】
営業CRM入力

② CS対応の応対記録を構造化する

問い合わせ対応後の応対記録を社内共有用にまとめたいとき

あなたはCSスペシャリストです。以下の通話内容を社内共有用の応対記録としてまとめてください。

出力形式:
・問い合わせ内容(1〜2行)
・対応した内容(ステップ形式)
・解決したか / 未解決の場合は次の担当者・エスカレーション先
・顧客の感情状態(怒り・不満・普通・満足のいずれか)

出力は日本語で。

通話内容:
【ここに通話テキストを貼り付け】
CS応対記録

③ 通話内容を議事録フォーマットに変換する

商談・打ち合わせの通話を議事録としてチームに共有したいとき

あなたは会議アシスタントです。以下の通話テキストを会議議事録に変換してください。

【会議名】【日時】【参加者】はテキストから推定して記載。不明な場合は空欄。

構成:
1. 決定事項(箇条書き)
2. 課題・宿題(担当者・期日付き)
3. 次回会議の予定(触れていなければ「なし」)

出力は日本語で。

通話テキスト:
【ここに通話テキストを貼り付け】
会議議事録