先月、契約更新の3日前に「やっぱり解約します」と連絡が来た。振り返ると、そのお客さんは2ヶ月前から少しずつログイン頻度が落ちていた。データを見れば分かったはずなのに、誰も気づかなかった。
カスタマーサクセスの仕事で一番しんどいのは、解約の連絡を受けてから動くことだ。更新の前日に慌てて電話しても、お客さんの気持ちはもう離れていることが多い。早く動きたいのに、どのお客さんに優先的に当たればいいかわからない、というのが正直なところだと思う。
Notion AIを使えば、この「気づくのが遅い」問題をかなり改善できる。特別な分析ツールを導入しなくても、今あるデータに一手間加えるだけで解約リスクを早めに読めるようになる。
ヘルススコアをNotionで整備する
顧客データベースに4つの数値列を追加するところから始める。ログイン頻度、使っている機能の数、問い合わせ回数、最終ログインからの経過日数。これを数値として管理すると、後の分析がぐっと楽になる。
各項目に重みをつけて合計点を出す数式列もNotionで設定できる。難しく考えなくていい。「最終ログインが2週間以上前なら−10点」「問い合わせが月3件以上なら−5点」くらいの簡単なルールを積み重ねるだけで、危険な状態にある顧客がひと目でわかるようになる。
Notion AIで兆候を言語化する
ヘルス点数が低い顧客のメモや過去のやり取りを、Notion AIに貼り付けて分析を頼む。
「この顧客の直近3回のやり取りを読んで、解約リスクがあるかどうかと、その理由を2〜3文で教えてください」
返ってくるのは「オンボーディングが完了していない」「問い合わせが増えているが解決されていない様子がある」といった具体的な兆候だ。数字だけでは見えなかった文脈が浮き上がってくる。ログを漠然と眺めていても見落としていたものが、言語化されると急に輪郭がはっきりする。
上位5件に絞って先手を打つ
ヘルス点数が低い順に並べたリストに、Notion AIの分析メモを紐付けておく。週のはじめにそれを見て、今週誰に連絡するかを決める。
全員を処理しようとしないのが大事だ。上位5件に絞って、ちゃんと時間をかける。薄く20件に連絡するより、5件に集中した方が解約阻止率は確実に上がる。
連絡後はステータスを更新し、何を話したか、どんな反応だったかを一言でも記録する。翌週のレビューで「このアクションが効いた」「ここはズレていた」と振り返れるようになって、精度が少しずつ上がっていく。
この3ステップを続けると、解約の連絡より前に動けるケースが増えてくる。完全に防ぐことはできないが、「気づいたら手遅れ」という状況は確実に減る。AIで先手を打つ考え方は、物流リスクを先読みする調達業務など、他の部門でも広がりつつある。
コピペで使えるプロンプト集
① 顧客の解約リスクをAIで診断する
解約リスクの高い顧客を特定したいとき
あなたはカスタマーサクセスの専門家です。以下の顧客データと会話メモをもとに、解約リスクを評価してください。 【顧客情報】 ・契約期間:【例:6ヶ月】 ・月間ログイン回数:【例:3回(平均8回)】 ・使用機能数:【例:2個(全8個中)】 ・直近の問い合わせ:【例:操作方法について2件】 ・会話メモ:【例:「使い方がわからない」と発言あり】 以下を出力してください。 1. 解約リスクレベル(高・中・低) 2. 判断の根拠(2〜3文) 3. 推奨アクション(具体的に1つ)
② ヘルススコアの指標をAIに設計させる
顧客ヘルス指標の設計を始めるとき
あなたはSaaS企業のCSマネージャーです。以下の情報をもとに、顧客ヘルススコアの設計を提案してください。 【自社サービス情報】 ・サービス種別:【例:マーケティング自動化ツール】 ・主な解約理由:【例:使いこなせない、費用対効果が見えない】 ・管理中の顧客データ:【例:ログイン頻度、問い合わせ件数】 以下を出力してください。 1. 推奨ヘルス指標(5項目、各項目の重みも) 2. 「要注意」の閾値の目安 3. Notionデータベース設計のポイント(2〜3点)
③ 解約リスク顧客へのメール文を作成する
解約リスクのある顧客にプロアクティブに連絡するとき
あなたはカスタマーサクセス担当者です。以下の状況をもとに、プロアクティブな連絡メールを作成してください。 【顧客情報】 ・担当者名:【例:田中様】 ・契約プラン:【例:スタンダードプラン(月額5万円)】 ・懸念点:【例:最終ログインが3週間前、機能の半分を未使用】 ・関係性:【例:契約6ヶ月、オンボーディング済み】 件名と本文を作成してください。押しつけにならず、「活用状況を確認したい」というトーンで面談や電話の機会を提案する内容にしてください。
更新直前に「解約します」の連絡を受ける気まずさ、CS担当者なら一度は経験があると思います。
数字だけでなく、会話の文脈をAIに読ませることで「なんとなく不安」を言葉にできるというのは、このアプローチの一番の発見でした。
まず5件だけ試してみてください。「先手が打てた」という感覚が、続けるモチベーションになります。