月末になると、経理担当者の残業は当たり前になります。試算表を締めたあとの「コメント作成」が地味に時間を喰う。前月比をチェックして、大きく動いた科目を拾い、その理由を文章にまとめて、上長に送る。この作業だけで毎月4〜6時間が飛んでいくケースは珍しくありません。
ChatGPTとCopilot for Excelを組み合わせると、この流れを根本から変えられます。
Excelデータを貼るだけで、コメントの9割ができる
まず試算表から、変動が大きい勘定科目の行だけをコピーします。売上高・粗利・人件費・広告費あたりを数行コピーし、ChatGPTに貼り付けて「前月比を解釈し、社長向けの月次報告コメントを科目ごとに50字以内で作成してください。先月は採用増加で人件費が膨らみました」と一言添えます。
この「背景情報を一言添える」が最重要です。数字だけ渡すと「人件費が増加しました」で終わります。背景を伝えると「採用強化に伴い人件費が前月比18%増となりましたが、計画の範囲内です」という形になります。毎月の変化点を1〜2行メモしておくだけで、AIコメントの質が別物になります。
Copilot for Excelが異常値を自動で拾う
Microsoft 365 Copilotが使える環境なら、もう一段進められます。試算表シートでCopilotを呼び出し「前月比で±20%以上動いている勘定科目をハイライトして、変動理由の推測をつけてください」と入力するだけです。確認すべき箇所を自動抽出してくれるので、見落としが減ります。
ChatGPTとCopilotの役割分担はシンプルです。Copilotは「ExcelのデータをExcel内で整理・検知する」、ChatGPTは「整理済みのデータを日本語の文章に変換する」。この2ステップを分けて考えると、使いどころが明確になります。なおSharePointとCopilotを使った月次集計の自動化と組み合わせると、データ集約からコメント生成まで一気通貫で進められます。
ひろぎんHDが示した「報告書自動生成」の現実
ひろぎんホールディングスは、ExcelデータとBIシステムの出力をAIエージェントに渡すことで、定期報告書(PowerPoint)の自動生成に取り組んでいます。このPoC実証により年間7万5,000時間の削減を見込んでいます(参考:IoTNews)。銀行の月次報告書は数値の正確さが特に問われる業務ですが、それでもAIで大部分を自動化できることを示しています。
一般企業への応用は同じ考え方で十分です。試算表のCSVをChatGPTに貼り付け「役員向けの月次経営報告メモを作成して」と依頼するだけで、最初のドラフトが出てきます。そこを人間が確認・修正する方が、ゼロから書くよりはるかに速い。
「何をAIに伝えるか」を一度だけ設計する
毎月コピーするプロンプトを一つ作っておくと、翌月からは数字を貼るだけになります。決めておくのは3点だけです。「どの科目の変動を必ず説明するか」「許容範囲の閾値(例:前月比±15%超)はどうするか」「コメントの読み手は誰か」。
この設計をシステムプロンプトとしてChatGPTのカスタム指示に保存してしまえば、毎月の作業は「試算表の数字を貼る」「背景を1行添える」だけです。月次決算コメント作成が4時間から30分に変わります。
コピペで使えるプロンプト集
① 月次決算コメントを科目別に自動生成する
月次試算表の科目別コメント作成
あなたは経理部門のアシスタントです。以下の月次試算表データをもとに、役員向けの月次報告コメントを作成してください。 【試算表データ(前月比)】 (ここに科目名・今月金額・前月金額・増減率を貼り付ける) 【今月の背景情報】 (例:採用増加で人件費が膨らんだ/広告キャンペーンで売上増) 【指示】 ・変動が大きい科目(±15%以上)を優先的に説明する ・各科目コメントは50字以内 ・社長が読むことを想定し、専門用語は避ける ・コメントが不要な科目は「変動なし」と記載する
② 試算表の異常値を検知してチェックリストを作る
月次締め前の数値確認・異常検知
以下の試算表データを分析し、確認が必要な箇所をリストアップしてください。 【試算表データ】 (ここに科目名・今月・前月・予算を貼り付ける) 【確認基準】 ・前月比±20%以上の科目 ・予算対比±15%以上の科目 ・前年同月比で極端に乖離している科目 【出力形式】 1. 要確認科目名 2. 変動率(前月比・予算比) 3. 考えられる原因(推測) 4. 担当者への確認事項 確認が不要な科目は出力しない。優先度の高い順に並べる。
③ 役員報告用の月次経営メモを作成する
取締役会・経営会議向け月次サマリー作成
あなたは経営企画のアシスタントです。以下の月次データをもとに、役員会議用の経営報告メモを作成してください。 【月次サマリーデータ】 ・対象月:【2026年◯月】 ・売上高:【◯◯万円】(前月比【◯%】、予算比【◯%】) ・営業利益:【◯◯万円】(前月比【◯%】) ・主な増減要因:【記入する】 【出力形式】 ・全体サマリー(3行以内) ・注目ポイント(2〜3項目・箇条書き) ・来月への申し送り事項(1〜2行) 読み手は経営陣。数字の羅列ではなく、意思決定につながるコメントにする。
月末に試算表を閉めてからのコメント作業、地味にしんどいですよね。毎月同じような文章を書き直している感覚、よくわかります。
「背景を一言添えるだけで、AIのコメント精度が激変する」という気づきは、使ってみると本当にそのとおりで。数字を渡すより、その数字が動いた理由を一言添える方が、ずっと使いやすいドラフトが返ってきます。
まずは今月の試算表から、一科目だけChatGPTにコメントを作ってもらうところから試してみてください。