プレスリリースの最終稿をNotion AIで仕上げて配信した翌日、取引先から「この文章、AIが書いたんですか?」と一言あった。クオリティに問題があったわけでも、咎められたわけでもない。ただ、社内でどう答えるか決めていなかった。
プレスリリースにChatGPTやNotion AIを使う場面は増えているが、作った後の「出どころ管理」が追いついていない会社は多い。AI生成コンテンツへの「透かし」が現実の課題になりつつある。C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)という国際規格が広告・出版の現場に広がり始め、Adobe・Microsoft・Googleなどがすでに対応ツールを提供している。MetaはInstagramとFacebookで、AIが生成または大幅に加工した画像・動画へのラベル表示を義務づけた。「使ったAIツールと生成物」を記録・開示できる体制が、日本の広報・マーケ担当にとっても他人事ではなくなってきた。
C2PAが変えるコンテンツの「証明」
C2PAは、コンテンツの「出どころ」を電子証明書として埋め込む仕組みだ。誰が、どのツールで、いつ作ったかを画像やPDFに付与できる。Adobe Fireflyで生成した画像には「Content Credentials」バッジが自動付与され、Photoshopでの編集履歴も残る。対応ツールで作られた素材は、Content Credentials Verifyで誰でも出どころを確認できる。
ChatGPTやClaudeでのテキスト生成は現時点でC2PA対応していない。ただし画像系ツール(Adobe Firefly・Bing Image Creator・Dall-E等)は対応が進んでいる。広報素材として画像AIを使っているなら、今のうちに記録の仕組みを持っておいた方がいい。
ワークマンが示した実例
日本のアウトドア・作業着チェーン「ワークマン」は、Google Cloud Gemini 2.5 Flash Imageでプッシュ通知用画像を生成し、通常比1.5倍の開封率を達成した。AI生成コンテンツが実際に業績に貢献している事例だ。こうした取り組みを対外的に発信するとき、「どのAIで作ったか」をすぐ答えられる状態が信頼の土台になる。成果が出るほど、出どころ管理の重要性は上がる。
Notion AIで管理台帳を作る手順
現実的な対処は、コンテンツごとに「AI利用記録」をNotionデータベースで管理することだ。次の4項目を記録する。コンテンツ名、使用AIツール名(Notion AI・ChatGPT・Adobe Fireflyなど)、生成した内容(テキスト原稿や画像ファイル名)、承認者と配信日。
Notionのテンプレートとして用意しておけば、記事や画像を配信するたびに2〜3分で入力できる。「このプレスリリース草稿から管理台帳のエントリを作って」とNotion AIに指示するだけで、必要な情報を自動で整理してくれる。
台帳があれば、後から確認が来たとき証跡をすぐ出せる。チームが変わっても記録が残る。義務かどうかより、「答えられる状態」を先に作っておくのが実務として正しい。
今すぐ動く3つのステップ
まず、Notionに「AI利用台帳」ページを1枚作る。次に、次の配信から「AI生成フラグ」をつけるルールをチームで決める。最後に、メディアや取引先から開示を求められたときの回答テンプレートを1本準備しておく。
AI生成コンテンツが日常になった今、「うちはどのくらいAIを使っているか」を即答できる状態が、広報の基本動作になりつつある。
コピペで使えるプロンプト集
① AI利用台帳エントリを自動作成する
配信後のコンテンツ管理記録作業
以下の広報コンテンツを読み、Notion管理台帳に追加するエントリを作成してください。 【コンテンツ】 [ここに記事・プレスリリース・SNS投稿などを貼る] 以下の項目を埋めてください: ・コンテンツ名: [タイトルまたは配信件名] ・使用AIツール: [Notion AI / ChatGPT / Claude / Adobe Firefly / その他: ] ・AI生成箇所: [全文 / 一部(具体的に: )/ 画像のみ] ・承認日: [YYYY/MM/DD] ・外部配信先: [メディア名・SNS・プレスリリース配信サービス名] ・開示フラグ: [要開示 / 開示不要 / 要確認] Notionデータベースにそのまま貼れる形式で出力してください。
② AI生成コンテンツの開示コメントを作る
メディアや取引先からAI利用について問い合わせがあったとき
あなたは広報担当です。社外からAI利用について問い合わせが届きました。以下の状況で、誠実かつ簡潔な開示コメントを作成してください。 【状況】 ・問い合わせ元: [メディア / 取引先 / SNSユーザー / その他: ] ・該当コンテンツ: [プレスリリース / 広告素材 / SNS投稿 / その他: ] ・使用AIツール: [ChatGPT / Notion AI / Adobe Firefly / その他: ] ・AI使用の程度: [全文生成 / 草稿ベース・人間が編集 / 画像のみ] 条件: ・言い訳がましくならないこと ・100〜200字で簡潔に ・丁寧すぎる表現は不要 ・聞かれたこと以上を語りすぎない
③ チーム向けAI利用ガイドライン草案を作る
広報・マーケチームにAI使用ルールを整備するとき
あなたは広報・マーケチームのリーダーです。チーム向けのAI利用ガイドライン草案を作成してください。 【前提】 ・対象チーム: [広報のみ / マーケのみ / 広報+マーケ] ・主な使用ツール: [Notion AI・ChatGPT・Adobe Firefly等] ・配信対象: [プレスリリース / SNS投稿 / 広告素材 / 社内資料] 以下の5項目を各50〜80字で箇条書き: 1. AIを使ってよい業務範囲 2. 記録・管理のルール(何をどこに残すか) 3. 外部配信前の確認事項 4. 外部から開示を求められたときの対応 5. 禁止事項 断言的な法的表現は避け、「〜を推奨します」の形式で書くこと。
「AIが書いたの?」って聞かれて、すぐ答えられなかった経験、きっとあると思います。
でも、それはAIが当たり前になったからこその問いかけで、責められているわけじゃない。
台帳、今日作っておくだけで、来月の自分がずっと楽になりますよ。