月次決算の3日間で、仕訳の確認だけに半日が消えていく経験をしたことがあるなら、この話は参考になります。
経理・財務の月次決算作業には、AIに渡しやすい作業とそうでない作業があります。判断が要らない「照合・整形・文章化」はAIが得意で、勘定科目の最終確認や承認は人間が担う。この分担を意識すると、決算週がずいぶん変わります。
仕訳データのチェックはAIに渡して始める
最初にAIに渡してほしい作業が、仕訳データの確認です。前月と今月の科目別金額をExcelで貼り付けて、「差が10%以上ある項目を一覧にして、気になる点をコメントしてください」と頼むだけで、確認リストが出てきます。ChatGPTやClaudeは表をそのまま受け取れるので、ツールを別に用意する手間もありません。
差異分析のコメント作成も同じです。実績数値とあわせて「売上が先月比15%増加。主な要因として考えられることを経営報告用にまとめてください」と渡すと、コメントのひな形が返ってきます。最終的な数字の背景は自分で補いますが、ゼロから書くより格段に速い。1時間かかっていたコメント作業が、15〜20分で終わるようになります。
経費精算の分類確認も手が届く
複数部門からまとまった経費データが届く時期にも、AIは役立ちます。「以下の経費明細のうち、交際費・会議費・福利厚生費に該当しそうな項目を分類して、迷うものにはコメントをつけてください」と依頼すると、見落としが減ります。全件を目視するより、AIが一次確認した結果を人間がレビューするほうが精度も上がります。
予算と実績の突合も同じ考え方で効率化できます。FP&A担当者が予算実績突合をCopilotで67%削減した事例のように、差異分析にAIを組み合わせる流れは月次決算と共通点が多く、参考になります。
日本生命保険が書類確認時間を70%削減した理由
2026年7月、日本経済新聞が報じたところによると、日本生命保険はAnthropicのClaudeを活用した書類審査AIを導入し、書類1件あたりの確認時間を70%削減しました。年間に換算すると1万1,000時間以上の削減です。
重要なのは、AIが「内容を最終判断する」のではなく「確認すべき点を整理して担当者に示す」という使い方に徹している点です。経理・財務の月次決算でも同じ考え方が使えます。AIを「自動化ツール」として使うのではなく、「確認の下準備をしてくれるアシスタント」として使う。この位置づけが、実務で定着する近道です。
AIへの渡し方で結果が変わる
実際に使う際に意識してほしいことが3点あります。まず、前提を渡すこと。「これは月次決算用の仕訳データです。勘定科目Xは製造原価のうちYY費に対応しています」といった背景を最初に書くと、返ってくる内容の精度が変わります。
次に、一つずつ頼むこと。「仕訳確認して差異もまとめてコメントも書いて」と一度に頼むと精度が落ちます。作業を分けて渡す。最後に、結果を必ずレビューすること。AIは数字を取り違えることがあるので、金額の照合は最終確認を欠かさない。この3点を守るだけで、実務で使えるレベルになります。
コピペで使えるプロンプト集
① 仕訳差異の一次チェックプロンプト
月次決算で仕訳データの差異を確認するとき
あなたは経理・財務の確認作業を支援するアシスタントです。以下は【会社名】の【月次】仕訳データです。前月と今月の勘定科目別金額を比較し、差異が【10%以上または50万円以上】の項目を一覧にしてください。各項目には差異の方向(増加・減少)と、一般的に考えられる原因の候補を簡潔に添えてください。最後に「追加確認が必要そうな項目」を3件以内で挙げてください。 【データをここに貼り付け(科目名・前月金額・今月金額)】
② 差異分析コメント自動生成プロンプト
経営会議・月次報告向けの差異分析コメントを作成するとき
あなたは経営会議向け財務報告を支援するアシスタントです。以下の予算対実績データをもとに、経営陣向けの差異分析コメントを作成してください。 条件:ですます調・200〜300字以内・構成は①主要な差異の事実、②推定される要因、③来月への示唆・具体的な数値を必ず含める・抽象的な表現は避ける 【科目名・予算額・実績額・差異をここに記載】 【特記事項(例:今月はXイベントがあり広告費が通常月より高い)】
③ 経費精算の科目分類チェックプロンプト
複数部門からの経費精算データをまとめて確認するとき
あなたは経理部門の確認作業を支援するアシスタントです。以下の経費精算データを確認し、各行を【交際費・会議費・消耗品費・福利厚生費・その他】に分類してください。 ・判断が難しいものには「要確認」とコメントをつける ・税務上の留意点(交際費・接待飲食費の区分等)に関わる可能性がある項目には「税務フラグ」をつける ・最後に部門別の経費合計を科目ごとにまとめる 【日付・金額・摘要・申請者部門をここに貼り付け】
月次決算の追い込み感、経験した人にしかわからないあの感じですよね。
「全部自動化」ではなく「確認の下準備をAIに任せる」という切り口、意外と盲点でした。人間が判断する場所を絞り込んでくれるアシスタントとして使うと、実務での定着がぐっと早くなります。
まず差異コメントの下書きだけ試してみてください。一度使うと、手放せなくなります。