決算発表の数日前、プレスリリースのドラフトを書きながら同時に記者からの想定Q&Aリストも更新して、CFOコメントの文言チェックもある。そんな状態で深夜を迎えたことがある人なら、今回の話はすぐ試せると思う。
GeminiにプレスリリースのドラフトをAIに渡す
手順は単純だ。前期の決算短信と前回のプレスリリースをGeminiに貼り付け、「今期の決算数値はこちらです。前回と同じ構成でドラフトを作ってください」と添えるだけ。数分でたたき台が出てくる。
完成度は当然100%ではない。数値の正確性は必ず人間が確認する。ただ、「最初の一文を書く」「構成を考える」という最も時間のかかる工程がなくなるだけで、体感する負担はまったく違う。Geminiで財務・法務書類を大量処理する前の準備も合わせて確認しておくと、実際の業務への組み込み方がイメージしやすい。
Geminiは長文の入力を扱うのが得意だ。昨年度・一昨年度の複数のプレスリリースを同時に読み込ませると、自社特有の表現パターンや文体を反映したドラフトが出てくる。最初から「自社らしい文章」に近い状態でたたき台が作れるのは、外部ツールにはない強みだ。
記者Q&A想定はAIが最も得意な作業
プレスリリースを貼り付けて「このリリースに対して記者が聞きそうな質問を20個挙げてください」と入力する。アナリスト向けか一般メディア向けかを指定すると、質問の角度が変わる。前者は数値の前提や増減要因の深掘り、後者は事業の社会的意義や競合との比較に集中した質問が増える。
想定外の問いが混じることも多い。その「盲点」を埋めておくのがAI活用の実質的な価値だ。自分だけで準備した場合には気づかなかった視点から本番で記者に突かれる、という状況を減らせる。
三菱商事が実証した文書業務AI化の現実
三菱商事は自社開発のAIプラットフォーム「Tachyon」を全社展開し、年間4万時間の業務削減を達成した。IR・法務・広報など文書量が多い部門で特に効果が出ている。プレスリリースのドラフト作成、過去の開示資料との整合性チェック、想定Q&Aの一覧化——全て、AIが得意とする反復的な文書作業だ。
大量の半定型文書を扱うIR担当者こそ、AIとの相性がいい。毎期同じ構成で書く決算対応は、人間がゼロから書くより、AIが過去のパターンを踏まえてドラフトを出す方が早い。人間は「判断」と「精度の確認」だけに集中できる構造になる。
残り半日で「質」だけに集中できる
ドラフト作成と想定Q&Aの一次版をAIに任せると、人間の作業は精度を上げることだけになる。CFOのコメントのトーンを整える、財務数値の根拠を再確認する、法務・コンプライアンス観点でのチェックを加える——本来集中すべき場所に時間を回せるようになる。
次の決算対応で、まずプレスリリースのドラフト1本だけGeminiに作らせてみてほしい。深夜になる前に、見切り発車できる状態になっていることに気づくと思う。
コピペで使えるプロンプト集
① 決算プレスリリースの初稿をAIに作らせる
決算発表前のプレスリリース初稿作成
あなたは上場企業のIR担当として決算プレスリリース(第一稿)を作成します。以下の情報を使ってください。企業名:【〇〇株式会社】/決算期:【第〇期または第〇四半期】/売上高:【〇〇億円、前年比〇〇%増減】/営業利益:【〇〇億円、前年比〇〇%増減】/主要トピックス:【例: 新事業立ち上げ・M&A・構造改革等】。構成は①ヘッドライン、②サマリー(3文以内)、③業績ハイライト、④経営陣コメント(CFO)、⑤今後の見通しの順で作成してください。文体はですます調。読者は機関投資家と一般メディアです。
② 記者・アナリスト向け想定Q&Aを20問作成する
決算発表後の記者会見・説明会準備
あなたは上場企業の広報担当として決算発表後の記者会見を準備しています。以下のプレスリリースを読んで、記者や証券アナリストから想定される質問を20問と、各質問への回答例(150〜200文字程度)を作成してください。【プレスリリース全文をここに貼り付け】。質問は「経営戦略」「財務数値」「業界・競合」「リスク・課題」の4カテゴリに分けて出力してください。特に答えにくい質問には★マークをつけてください。
③ 前期プレスリリースとの差分・文言チェック
プレスリリース最終確認・品質チェック
あなたは上場企業のIRチームで文書品質チェックを担当しています。【今期プレスリリース案】と【前期プレスリリース】を比較して、①数値の不整合(本文と表で齟齬がある箇所)②前期から変更・削除された表現の一覧③表記ゆれ(同じ指標に複数の呼び方を使っている箇所)の3点を箇条書きで指摘してください。各指摘には修正案も添えてください。【今期:〇〇〇〇】【前期:〇〇〇〇】
決算期の深夜は、「自分しかいない」感がつらいですよね。
AIにドラフトを出させてみると、「あ、ここはこう整理すればいいのか」と気づきが生まれやすいんです。書く前に考えるより、直す過程で思考が整理される。
次の決算、1本だけ試してみてください。