決算説明会の前週、IR担当が毎回やっている作業がある。去年のQAシートを開いて、数字だけ差し替えて、役員に確認メールを送る。2〜3往復して、やっと完成する。このループ、今年からAIに任せていい。
ChatGPTに決算想定QAの初稿を作らせる方法
用意するのは3点だけ。直近の決算短信PDF、前回説明会のQ&A記録、自社のIR方針の概要(一行でいい)。これをClaude(claude.ai)に渡して「株主・アナリストから来る可能性が高い質問20問と回答ドラフトを作って」と指示する。
プロンプトはシンプルなほど精度が上がる。「当社は〇〇業。今期の営業利益は□□億円(前期比△△%)。投資家から想定される厳しい質問と、誠実に答える回答ドラフトを20問、各200文字以内で出して」——これだけで使える初稿が返ってくる。
出てきた20問のうち、そのまま使えるのは12〜15問程度。残りは担当者が手直しする。ゼロから書くより直す作業のほうがはるかに速く、1時間かかっていた作業が20分以内に収まる感覚になる。
みずほFGが実証した文書作成90%短縮の現実
大手金融機関でも同じ変化が起きている。みずほフィナンシャルグループはClaudeを3万人規模に全社展開し、文書作成タスクで作業時間を最大90%短縮したと報告している(ビジネス+IT、2026年7月)。エンジニアだけでなくビジネス部門を含む全社員が日常業務にAIを組み込んだ結果だ。
IRや広報担当が個人レベルで同じことを始めれば、週に4〜6時間は取り戻せる。その時間を、投資家との本質的な対話準備や、次期のIR戦略立案に使える。FP&A担当者がClaudeで週3時間を取り戻す方法と組み合わせると、財務・IR部門全体の情報開示工数を一気に圧縮できる。
適時開示文書の下書きにも同じ方法が使える
TDnet(適時開示情報閲覧サービス)に提出する「業績修正」「役員変更」など定型フォーマットも同様だ。過去の類似開示文書をAIに読み込ませ「今回は〇〇の事実をもとに同じ形式で下書きして」と指示すると、修正箇所が格段に減る。1件あたり30〜40分かかっていた作業が10分以内に縮む。
注意点は1つ。AIが出力した数字は元の決算短信で必ず確認する。文章の論理性はAIが得意だが、数値の整合性チェックは人間がやる仕事だ。ドラフト生成→人間レビュー→確定という3ステップの分担を決めれば、スピードと精度は両立する。
明日から試せる最初の一歩
ChatGPTかClaudeの有料プランがあれば、今日から始められる。まず直近の決算短信PDFをアップロードし、「この資料をもとに株主向け想定QAを15問作って」とだけ打ってみる。返ってくる初稿を見れば、使えるかどうかはすぐわかる。
完成品を求めない。80点の初稿をゼロ秒で作らせて、残り20点を人が磨く。そのサイクルが定着すれば、次の決算シーズンからの仕事量は確実に変わる。
コピペで使えるプロンプト集
① 決算説明会向け想定QAドラフト作成
決算発表前のIR担当業務
あなたは上場企業のIRアドバイザーです。以下の情報をもとに、決算説明会で株主・アナリストから想定される質問と回答ドラフトを作成してください。 【会社概要】:〇〇業、【直近の決算ハイライト】:売上高□□億円(前期比△△%)、営業利益□□億円(前期比△△%)、【特記事項】:(例:主要製品の価格改定、海外展開、コスト増要因など) ■出力形式:Q&A形式で15〜20問。各回答は150〜200文字以内。厳しい質問も含めて、誠実かつポジティブに答える内容にすること。
② TDnet適時開示文書の下書き作成
業績修正・役員変更などの適時開示対応
あなたは上場企業のIR担当です。以下の開示事実をもとに、TDnet向けの適時開示文書の下書きを作成してください。 【開示区分】:(例:業績修正、役員変更、子会社設立など)【開示する主な事実】:(例:○月○日付で副社長□□が辞任、後任に△△を選任予定)【開示理由】:(例:経営体制の強化のため) ■出力形式:東証の開示書式に沿った文体で。簡潔・正確に。200〜300文字で下書きを作成すること。
③ 個人投資家向けIRリリースの構成案作成
決算プレスリリースや株主通信の作成
あなたは上場企業の広報・IR担当です。以下の情報をもとに、個人投資家向けプレスリリースの構成案と各セクションのドラフトを作成してください。 【発表内容の概要】:(例:今期の業績結果と来期見通し、新規事業の進捗)【ターゲット読者】:個人投資家(投資歴3〜10年)【強調したいポイント】:(例:増益の要因、次期成長戦略の具体性) ■出力形式:見出し案3〜5点 + 本文ドラフト(各セクション100〜150文字)。専門用語は最小限にし、わかりやすい言葉で書くこと。
「今年こそQA作業を楽にしたい」と思いながら、結局また同じ作業をしてしまう——そのループ、すごく共感します。
AIに初稿を作らせるだけで、「直す作業」に集中できる。これだけで仕事の密度がガラッと変わります。
まずは今日の決算短信で一回だけ試してみてください。