社内から「Excelが開けません」「VPNの接続方法を教えてください」という問い合わせが毎日届く。情報システム担当者なら、似たような質問への回答を何度もコピペしてきたはずです。その繰り返し作業の大半は、AIエージェントに渡せます。
まず社内FAQを20件まとめる
最初にやることは、過去1ヶ月の問い合わせログを見て「よくある質問トップ20」を洗い出すことです。パスワードリセット、VPN設定、共有フォルダのアクセス権、テレワーク時のトラブルシューティング——このあたりは、どの会社でも上位に入ります。
ChatGPTやMicrosoft Copilot Studioは、このFAQドキュメントを「知識ベース」として読み込み、社員からの質問に自動で答えられるようになります。Microsoft 365を導入済みの企業なら、SharePointにFAQページを作り、Copilot Studioで知識源として設定し、Teamsに公開するだけです。複雑な開発は必要ありません。
過去のメールログをChatGPTに貼り付けて「よくある質問と回答を一覧にまとめてください」と依頼すれば、FAQ叩き台が30分以内に出来上がります。これを整形して社内ドキュメントに保存するのが、最初のステップです。Notion AIで問い合わせ管理を効率化する方法も参考になります。
協栄火災海上保険が年間1,207時間削減した方法
日本企業でもAI社内ヘルプデスクの導入は進んでいます。損害保険業の協栄火災海上保険は、パナソニック ソリューションテクノロジー製AIチャットボット「WisTalk」を社内ヘルプデスクに導入しました。月平均9,100件の利用があり、社内照会件数を13%削減。年間14,478件の自己解決を実現し、約1,207時間の業務時間を削減しています(出典:PR TIMES)。
削減できた理由は「担当者が答えなくても社員が自分で解決できる環境を作った」からです。問い合わせが来てから答えるのではなく、答えを先に用意して検索できる仕組みにする。この発想の転換がポイントです。
Copilot Studioで設定する3つのポイント
実装時に押さえたいのは3点です。
まず知識ベースの質を上げること。FAQは箇条書きより「問い + 答え」の会話形式にすると、AIが正確に引用しやすくなります。社員の実際の言葉遣いで質問文を書くと、ヒット精度がさらに上がります。
次にエスカレーションの設計。AIが解決できなかった質問は担当者に転送し、そのログをもとにFAQを改善していく仕組みを最初から作っておきます。「解決できなかったことが改善のタネ」という意識を持つと、運用が続きます。
最後に定期メンテナンス担当者を決めること。社内規定や手順が変わったらFAQも更新する人を決めておかないと、時間が経つほど精度が落ちます。月に1度の見直しサイクルを設けるだけで、高い精度を維持できます。
情報システム担当者が本来集中すべきは、新しいシステムの企画や社員のデジタルリテラシー向上です。毎日繰り返される問い合わせ対応から解放されれば、その時間を取り戻せます。まず過去のメールから質問20件を抽出することから始めてみてください。
コピペで使えるプロンプト集
① 過去の問い合わせからFAQを生成する
社内問い合わせログのFAQ化
以下は社内から届いた問い合わせメール・チケットの一覧です。 【問い合わせ履歴をここに貼り付ける(件名・本文・対応内容)】 これらを分析して、社内ヘルプデスク向けFAQを作成してください。 条件: 1. 類似の質問をグループ化する 2.「Q:〇〇するにはどうすればいいですか? A:〇〇してください。」の会話形式で書く 3. 回答は情報システム担当者でなくても実行できるよう、手順を番号付きで書く 4. 最低15件以上のQAを生成する 5. カテゴリ(アカウント管理/ネットワーク/端末トラブル等)でグループ分けする
② 社内ヘルプデスクボットのシステムプロンプトを作る
Copilot Studio・Custom GPT設定時の指示文作成
社内ITヘルプデスク専用AIチャットボット用のシステムプロンプトを作成してください。 【会社名・部署名】 【主な使用ツール:Microsoft 365 / Slack / 社内VPN等】 【対応範囲:アカウント管理・ネットワーク・端末トラブル等】 要件: - 丁寧だが簡潔に回答する - 添付のFAQドキュメント外の情報は推測せず「担当者に確認します」と伝える - FAQに記載がない場合は問い合わせフォームのURLを案内する - 箇条書きより会話形式で回答する - 3回答えても解決しない場合は人間担当者にエスカレーションする
③ 月次問い合わせログを分析して改善点を探す
月次ヘルプデスク改善レビュー
以下は今月のヘルプデスク問い合わせログです。 【問い合わせログ:日付・件名・カテゴリ・対応時間・解決有無を表形式で貼り付ける】 このデータを分析して以下を教えてください: 1. 件数が多いカテゴリトップ5 2. 対応時間が長かった問い合わせの傾向と原因 3. 繰り返し発生している問題の根本原因として考えられること 4. FAQに追加すべき質問の候補3件(質問文と推奨回答も作成) 5. 来月の問い合わせ件数を10%以上削減するための具体的な改善提案
毎日同じ質問に答え続ける作業、本当に消耗しますよね。
でも協栄火災の事例を見ると、整理されたFAQを一つ用意するだけで、年間1,200時間以上が取り戻せることが分かります。難しい開発は不要で、既存ツールの組み合わせで動き始められます。
まず過去のメールから質問20件を抽出することから、今日始めてみてください。